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世界の環境関連ニュース(2021年6月第2週)

イタリア最大手の自動車メーカーである「フィアット」がEV化を進めることを発表しました。専門誌を中心に多くのメディアで報道されています。2025年からEVを市場に投入し、2030 年にはラインナップ全てをEV化する、としています。フィアット(Fiat)は欧州メーカーの中でも最後までEV化宣言をしていないメーカーの1つでした。電池の低価格化の目途が見えてきた為、としています。
https://www.autoexpress.co.uk/fiat/355176/fiat-become-electric-only-2030

欧州委員会が計画する廃棄物の完全域外輸出の可能性について、国際リサイクル局(BIR)が懸念を示しています。域内リサイクルを促進する為に廃棄物輸出を完全禁止する欧州委員会の提案は、結果的にヨーロッパの金属リサイクル産業に崩壊をもたらす可能性があると警告しています。EU当局者は包括禁止ではないとしていますが、輸出する場合は受け手側もEUと同じ条件(デューデリジェンス含め)が求められるようになり、事実上の禁止措置となります。欧州では全ての金属をリサイクルして再利用するだけのキャパシティーがありません。選別してもペイしない下級屑の行き場が大きな問題です。
https://www.euractiv.com/section/circular-materials/news/metals-recycling-in-eu-could-collapse-under-new-rules-companies-say/

欧州のスターバックスが2025 年までに、ヨーロッパ、中東、アフリカの全ての店舗で再利用可能なカップに変更する事を発表しています。具体的には今年、英国、フランス、ドイツでプロジェクトを開始し、徐々に採用国を増やし、2025年までに43カ国に拡大します。紙コップの場合は追加料金を徴収、再利用可能なカップの場合は割引、セラミック製品を含む再利用可能なカップを顧客に奨励します。スターバックスは2030年までに廃棄物を50%削減するという目標を掲げています。大手ブランドが始めるという事は、これがスタンダード化されていくという流れと考えられます。
https://stories.starbucks.com/emea/stories/2021/emea-cup-share-program-2025/

「プラスチック・ヨーロッパ協会(Plastics Europe)」が、計画中のケミカルリサイクルへの投資を大幅に増やす事を発表しています。2025年に26億ユーロ(3300億円)、2030年には72億ユーロ(9200億円)に増加します。欧州委員会の「Circular Plastics Alliance」による欧州製品に使用されるリサイクル材の利用目標は2025年までに1000万トン、その内ケミカルリサイクルによるものを120万トンとするよう、プラスチックス・ヨーロッパ協会は目標を定めています。現在、埋め立てや焼却の対象となる混合プラスチック廃棄物を食品用の再生プラスチックに戻す方法はケミカルリサイクルしかなく、どのように商業化をしていくのか、欧州の手法は参考になると思われます。
https://www.plasticseurope.org/en/newsroom/news/european-plastics-manufacturers-plan-over-7-billion-euros-investment-chemical-recycling

米カリフォルニア州でボトルの回収制度(デポジット制度含む)を改正する法案が上院で可決されています。カリフォルニア州のデポジット利用は 57%で埋立てや廃棄処分を減らす目的があります。既にデポジット制度を採用している全米10州の中でもカリフォルニア州は3番目に回収率が悪い州という事です。オレゴン州やミシガン州はカリフォルニアが今回の法案で導入するものと同じシステムを採用しそれぞれ、86%と89%の回収率を実現しています。
https://www.prnewswire.com/news-releases/bill-assigning-responsibility-for-recycling-bottles–cans-to-beverage-industry-passes-ca-senate-in-major-consumer-victory-301305643.html

欧州包装用鋼生産者協会 (APEAL) によると、ヨーロッパでの鋼製リサイクルは過去最高の84%に達し、更に高くなる可能性がある、としています。APEALは、最近リサイクルに関する2025年のビジョンを示し、鉄鋼包装関連廃棄物の埋め立て処理を2025年までにゼロにする事を発表しています。APEALは今後も新たなスキームが追加される事で更にリサイクル率が上がる、としています。
https://www.apeal.org/news/steel-packaging-raises-the-bar-with-record-recycling-rate-of-84/

フランスの大手でリサイクルペット(r-PET)の生産技術開発とプラスチックの生分解酵素の開発を行う「Carbios社」が資本の(大幅な)増強をする事が伝えられています。同社はr-PET技術確立の為に「ロレアル」とコンソーシアムを共同設立し、ネスレ、ペプシコ、サントリー食品が参画しています。又、同社はプラスチックの生分解酵素を共同開発するパートナーシップをデンマークの「Novozymes社」と結んでいます。ペットのリサイクルとプラスチックの埋立て廃棄削減を両柱とするビジネスが急拡大しており、フランスの「SPI Fund」投資グループから同社が所有する「Carbiolice Capital」ビジネスユニットの37%の株式を再取得(取り戻す)した、と伝えられています。同社は2021年4 月にフランスのタイヤメーカー「ミシュラン」と使用済みポリエチレン・テレフタレート (PET) から「高強度タイヤ繊維」を開発したことを共同で発表しています。この分野への投資家の先行投資は、既に欧州では数年前から行われていた事が分かります。
https://www.carbios.com/en/business-development-model/
https://www.carbios.com/en/news/plastics-today-michelin-approves-use-of-polyester-tire-cord-recycled-from-waste-pet-bottles/

欧州で廃バッテリー、基板、電子機器、金属スクラップをリサイクルし、銅、ニッケル、亜鉛、貴金属などの金属回収(製錬・電解含む)を事業とする大手企業の「Umicore(ユミコア)」が昨日(6月7日)、新たに自動車関連の開発企業からCEOを招く事を発表しています。新CEOは自動車部品大手の「Faurecia (フォルシア)」のエクゼクティブコミッティーのメンバーです。Faureciaは自動車の内装(モジュール)では世界最大手で、世界にR&D センターを39個所持ち、35カ国で計114,000人の従業員を雇用している業界トップ10圏内の大手自動車サプライヤーです。何度かお伝えしていますが、既に欧州ではEV化の絶対的なカギは材料確保とリサイクルに掛かっている為、このような業界を超えた経営者の就任が今後もあり得ると考えられます。Faureciaは、水素、熱回収、自動運転に力を入れている企業です。
https://www.umicore.com/en/newsroom/umicore-announces-ceo-succession/

以前お伝えした内容ですが、先物市場へFintechを通じてアクセスする英国のMETTALEX社がトルコとインド向け鉄スクラップの先物取引を開始しています。 先物はシンガポールのDavis Indexの日時データを利用し、US-origin HMS 1/2 (80:20) CFRトルコとIndexとShreddedの CFR Nhava Sheva,Indiaの価格を利用します。参加者がどの程度か分かりませんが、スクラップ価格に投機マネーが入ってきた場合、市場に何等かの影響が出るかもしれません。
https://mettalex.com/blog/worlds-first-steel-derivatives-enter-the-defi-space-supported-by-mettalex-and-davis-index/

英国で政府調達に「脱炭素」が条件として入る事が決まりました。英国政府が発表した内容によると、500万ポンド(約7億5000万円)を超える政府調達を行う企業は、廃棄物の処理を含むゼロ炭素計画の提供が義務付けられます。対象企業は、2015 年に発表された「公共契約規則」に該当する者で、入札は中央政府の省庁、執行機関、及び公的機関が含まれ、金額は年間500万ポンド以上の契約に適用される、としています。入札企業は、廃棄物、出張、従業員の通勤、輸送、配送等の「スコープ 3」にカテゴライズされる炭素排出量にどのように対処するかを詳しく説明する必要があります。新規則では、入札者は2050年までにネットゼロを約束し、「主要な政府契約に入札する前に、明確で信頼できる炭素削減計画」を公表する必要があります。これを怠った企業は入札から除外されます。
https://www.gov.uk/guidance/public-sector-procurement-policy

遂に米ミネソタ州が自動車の触媒についてID登録化する事を決めています。米国では触媒の盗難が頻発しており、同じく欧州でも問題化しつつあります。ミネソタ州は、新しいID化のパイロットプログラムに40万ドルを投入します。自動車の所有者が触媒に車の識別番号を刻印するか、(ディーラー等で)取り外したときに部品を識別できるように永久にマークを付けてもらうことになります。
https://minnesotareformer.com/briefs/minnesota-lawmakers-agree-to-spend-400000-on-preventing-catalytic-converter-theft/

欧州で様々なメディアで報道されていますが、スウェーデンの「ノースボルト社」が大幅なバッテリー生産計画の増強を発表しています。欧州自動車メーカーからの需要増加とスウェーデンの年金基金のコンソーシアムからの追加投資が理由とされています。スウェーデンの自社工場の容量を当初の計画の40GWhから60GWhに増やすことを計画しています。これによりNorthvoltの欧州での総生産能力は2030年までに150GWhに押し上げられます。工場は今年の終わりまでに部分的な操業を開始する予定です。Northvoltは目標達成の為に少なくとも2つのギガファクトリーを欧州内に建設する予定で、1つはドイツになる可能性があります。ノースボルトはLiBバッテリーメーカーで唯一の「グリーンバッテリーの製造」を事業の柱に掲げているメーカーです。欧州電池指令で2024年7月よりLiBのカーボンフットプリント情報の開示義務、その後にはリサイクル材の利用率義務化がある為、需要は増す事が予測されていました。
https://www.reuters.com/business/energy/battery-maker-northvolt-raises-275-bln-expand-factory-2021-06-09/

製鉄法の低酸素化で最も注目されている技術の1つである天然ガスを利用した直接還元鉄 (DRI) 工場のニュースです。高炉の様な大規模な施設が必要無く、またコークスも不要で、天然ガスを使用して鉄鉱石を還元する工法の直接還元鉄製法の工場が米クリーブランドでラインオフしています。欧州では天然ガスの代わりに水素を利用する試みも始まっています。既にミニミルとして発展途上国での建設やアメリカを主とする先進国でもスクラップ代替の不純物が少ない(清浄冷)鉄源として需要が高まる事が予測されています。
http://www.clevelandcliffs.com/English/news-center/news-releases/news-releases-details/2021/Cleveland-Cliffs-Holds-Ribbon-Cutting-Ceremony-at-Direct-Reduction-Plant-in-Toledo/default.aspx

カナダのオンタリオ州が一般廃棄物の一部に完全なEPR法(拡大製造者責任法)を施行する事を発表しています。対象となる廃棄物は印刷紙と包装品で、現在ブルーボックスと呼ばれる各家庭に配置された資源廃棄物回収のボックスの廃棄物管理の責任を「生産者」に移します。生産者は、2023年7月1日より消費者が廃棄するブルーボックス内の対象廃棄物を収集・管理するシステムを構築し運用しなければなりません。2024年以降、生産者または生産者責任組織 (PRO)は、毎年管理要件を当局に報告する事も含まれています。既に欧州でも様々な製品へのERP導入の議論がされており、今後メーカーがリサイクラーを取り込むか独自の廃棄物管理スキームを作る事も予想され始めています。
https://rpra.ca/programs/blue-box/regulation/

WWFが「Forests Forward」というプログラムを開始しています。目的はWWFと参加企業が協力して自然、気候、人々に有意義かつ長期的な利益を実現することを目指す、としています。またForests Forwardの企業は、回復力のあるサプライチェーンを構築しながら、調達、気候、社会的リスクを軽減する方法について理解を深める、としています。既に欧米の大手数社が参画しています。少し前から繰り返していますが、気候変動対策を主導している欧米の団体が目指している次の「オイル」は水、空気、森です。
https://www.worldwildlife.org/press-releases/wwf-launches-forests-forward-a-global-program-to-help-companies-deliver-lasting-science-driven-strategies-to-benefit-nature-climate-and-people

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