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世界の環境関連ニュース(2021年5月第3週)
EU政府が廃棄物削減の為の大きな政策を発表しています。グリーンディールの一環でEU行動計画「大気、水、土壌のゼロ汚染に向けて」(Commission aims for zero pollution in air, water and soil)を採択していります。主な内容は、以下のとおり。
– 廃棄物、海でのプラスチックごみ(50%)、環境に放出されるマイクロプラスチック(30%)を削減することにより、水質を改善。
– 栄養素の損失と化学農薬の使用を50%削減することにより、土壌の質を改善。
– 大気汚染が生物多様性を脅かすEUの生態系を25%削減。
– 輸送騒音によって慢性的に妨害されている人々の割合を30%削減。
– 廃棄物の発生を大幅に削減し、残留都市ごみを50%削減。
この廃棄物「発生」50%削減は、EUの製造業とリサイクル業者にとってもインパクトのある政策です。
▶ https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_21_2345
プラスチックボトル製造とrPETのボトル製造では国際的な企業である「Plastipak社(UK本社 Holding は米ミシガン)」が、スペインの現生産工場でペットボトルのリサイクルとrPETの製造を開始します。同社は、ラマン分光式のレーザー選別装置(ドイツUnisensor社製)を導入しており、rPET製造分野では欧州で最大手の1つです。リサイクル施設での生産は2022年の夏に開始される予定にて、20,000トン/年の食品認証rPETを製造します。
▶ https://www.plastipak.com/es/
欧州連合(政府)の「Horizon2020(2年間の研究/イノベーションプログラム))のプロジェクトの1つである「CE WASTE」は、廃棄物処理認証制度を開発する事を目的の1つとしています。このプロジェクトは廃電気電子機器(WEEE)やバッテリー等の「重要な原材料」を大量に含む廃棄物の収集、輸送、処理施設のスキームを作成、検証しています。CE WASTEの最新レポートによると、リサイクルを法的強制力のあるものにし、EU諸国が(重要な原材料の)輸入依存を減らすことを主張しています。EUにおける電子及び、電気機器に含まれる「重要な原材料」のリサイクル率は、現在殆どの場合「ゼロに近い」と報告書は述べています。報告書は、法律の導入に加えて、EUからの違法な電子廃棄物の輸出を取り締まり、リサイクル技術の開発に投資し、企業が重要な原材料を回収する為の金銭的インセンティブを作成する事も重要であると述べています。EUは経済圏としてはインドに次ぐ世界第3位の約5億人の人口を持つ(1位は中国、2位はインド)地域であり、ここからWEEEが外に出ないとなると、流れが大きく変わる可能性があります。
▶ https://cewaste.eu/recycling-critical-metals-in-e-waste/
米国、EU、カナダ、日本のアルミニウム協会が共同でリリースを発表しています。これはG7政府に宛てたもので、「公正な貿易を歪める政府による(企業や産業への)支援に対し、規律を求める」ものです。内容の一部は、経済協力開発機構(OECD)から最近発表された(過去10年の)報告書を引用し(主に特定の国の政府が)、市場以下の(資金貸出)条件で自国企業を支援し生産応力を拡大してきた事を述べています。それら政府支援の価値は被支援企業の年間収益の4〜7%と推定し公正な貿易を歪めている、としています。またリリースでは、今後リサイクルの推進と温室効果ガスの排出を減らす生産を目指す事を述べています。
▶ https://aluminium.ca/uploads/source/FINAL_MAY_12_21_Alum_Joint%20release%20_Below%20market%20finance%20distortion.pdf
同じく、EU政府が米国と共同でアルミと鉄鋼について声明を発表しています。内容は、世界の鉄鋼及び、アルミニウム生産能力が過剰で、欧州連合と米国が共通の利害の下、対応する、としています。世界的な過剰生産能力によるEUと米国の鉄鋼/アルミニウム産業の労働者への影響を記載、また両地域は国家安全保障上の利益を共有している為、共通の懸念である貿易の歪曲を支援する国に対処する、としています。
▶ https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/statement_21_2525
既に一部で報じられていますが、米新興電気自動車メーカーの「フィスカ―(Fisker Inc.)」が、台湾の「フォックスコン(Foxconn)」と2023年Q4に米国で電気自動車の生産を開始するPJTに合意しています。自動車業界は冷静に見ていますが、フィスカ―がずっと目指しているこのビジネスモデルが成功した場合、自動車業界は大きな変革期に入ると言われています。台湾のフォックスコンは電子機器の生産を請け負う電子機器受託生産 (EMS) では世界最大の企業グループです。フィスカ―が目指すのは自動車版のEMSで、家電や電子機器と同じく部品は既存の部品業者や自動車メーカーから仕入れて、テスラの様な垂直統合生産ではなく、家電のようなEMSで電気自動車の生産を目指しています。フィスカー氏は既に3回失敗していますが、投資業界からはかなりの注目を集めています。本日シャープとも次世代自動車表示器(Screen)の契約を発表しています。
▶ https://investors.fiskerinc.com/news/news-details/2021/Fisker-and-Foxconn-Sign-Framework-Agreements-for-Project-PEAR-Confirming-Manufacturing-to-Start-in-U.S.-From-Q4-2023/default.aspx
▶ https://investors.fiskerinc.com/news/news-details/2021/Fisker-and-Sharp-Create-Technology-Partnership-for-Creation-of-Next-Generation-Automotive-Screens-and-Interfaces/default.aspx
幾つかの専門系メディアで伝わっていますが、ドイツ最大の鉄鋼メーカーである「テッセンクルップ(Thyssenkrupp)」が、「Remondis」の金属スクラップ・リサイクル子会社である「TSR」と高炉でのスクラップ利用を促進する共同プロジェクトのLOI(覚書)を締結した事です。新設の直接還元炉で使用されるようで、リサイクル材はTSRが(既に開発中の)新しいリサイクル工程で生産されたもの、としています。テスト後にティッセンクルップのデュイスブルク製鉄所と長期契約を結ぶ予定としています。生産工場は2022年秋に操業を開始予定。覚書なので?テッセンクルップのIRでは未だ発表がありません。TSRの親会社のRemondisは従業員3万人、事業所900個所、リサイクルと水資源管理では世界最大手の1社です。欧州における脱炭素とリサイクル材比率の法制度化は、間違いなくリサイクラーの原料製造の品質向上と量産安定性を求めてきます。その時代はもう目の前です(欧州の大手はどこも動いています。)
▶ https://www.chemengonline.com/thyssenkrupp-steel-and-tsr-recycling-of-scrap-materials-in-blast-furnace/
世界鉄鋼協会(ベルギー)が鉄鋼業界のCO2排出削減について推奨する生産工程と、その政策文書を発表しています。「ステップアップ」と呼ばれる工程(生産方式)で、鉱石からの場合は20%、スクラップ利用の場合は現状より50%、の二酸化炭素削減を目標としています。業界基準の見直し、スクラップ使用の最大化、化石燃料依存を減らす為の新技術の適用、を強調しています。それらには以下が含まれています。
– 還元剤としてバイオマス、水素9を利用、
– 炭素回収技術の利用、
– 電気分解(技術・工程)を利用した電気エネルギーの利用
結局、現在はスクラップの最大利用が最も現実的なので、テッセンクルップとTSRのような動きは今後も起こると思われます。
▶ https://www.worldsteel.org/en/dam/jcr:228be1e4-5171-4602-b1e3-63df9ed394f5/worldsteel_climatechange_policy%2520paper.pdf
トルコがプラスチック廃棄物の輸入を完全に禁止します。環境保護団体のグリーンピースが出した報告書によるとEU加盟国は2020年に2016年の20倍のプラスチック廃棄物をトルコに輸出し、その量が22,000トンから447,000トンに増加した、としています。中国やインドネシアが欧州のプラスチック廃棄物を受け入れなくなり、最近までトルコに廃プラスチックが流れる事が一般的になっていたので、また別の地域に行く事になりそうです。2021年1月から非OECD諸国へも廃プラの輸出が出来なくなっていますが、陸続きの欧州では実際には色々な方法がある為、受け入れ国の相次ぐ禁止により、廃プラ処理の能力増強(ケミカルリサイクル含む)、ごみ発電への寛容な政策が続いています。
▶ https://uk.finance.yahoo.com/news/turkey-bans-import-polymer-waste-180127786.html
米ワシントン州で特定の発泡スチロール(EPS)製品の製造、販売、流通を禁止する法案が施行される予定です。SB5022という法案で、発泡プラスチックのクーラー、食器梱包等が禁止製品の中に含まれています。同法はプラスチック飲料ボトル、パーソナルケア製品、家庭用クリーニング製品、ゴミ袋のリサイクル材基準を定めています。ワシントン州は、発泡スチロール食品容器を禁止した米国で7番目の州です。食品包装用のPSは欧州でもリサイクル材の再利用が困難で数年前より幾つかのプロジェクトが行われてきました。
▶ https://legiscan.com/WA/bill/SB5022/2021
フィンランドのヘルシンキを拠点とする包装材料の開発製造を行う新興企業「Sulapac社」が、美容及びパーソナルケア業界向けに水性内容物に対応した生分解する化粧品用容器材料を開発して特許申請している事を発表しています。現在のプラスチック容器はリサイクルする際に破砕洗浄した場合には微量でもマイクロプラスチックの発生と自然界への流入が避けられず、完全に生分解する容器が求められています。但し、化粧品は水をベースとしたジェル状の内容物が多く、生分解する代替材の利用は技術的に困難でした。同社では水ベースの内容物に適した持続可能なバリアを作成する事に成功した、としています。欧州政府は今月、EU行動計画「大気、水、土壌のゼロ汚染に向けて」を採択し、環境に放出されるマイクロプラスチックを30%削減する事を発表しています。
▶ https://www.sulapac.com/blog/the-first-water-based-cosmetics-packaging-that-biodegrades/
5/19(UK 1.5%)、5/20(EU 1.6%)に英国と欧州のインフレ率が発表され、月次で急激に上昇している事から懸念が広まり始めています。米国のインフレも既にFRBの目標の2倍のペースになっており、中央銀行による利上げ懸念から欧州株が下がっています。ただ、何れの国も利上げを示唆している所はありません。「利上げ懸念」だけで、銅、ニッケル、アルミにも瞬時ですが影響が出る可能性があります。先進主要国の利上げがあると新興国通貨安になりますので(しかも新興国はコロナ回復が遅い)様々な問題が起こる事への懸念報道が散見されます。
▶ https://uk.finance.yahoo.com/news/stock-market-report-19-may-ftse-cac-dax-uk-inflation-nasdaq-dow-jones-sp500-073459576.html
ロシアの国家貿易省が、鉄スクラップの輸出税を1トン45ユーロから90ユーロ(109.60ドル)と2倍にする予定のようです。スクラップの急騰もあり、ロシアからユーラシア経済連合外への鉄スクラップの輸出が3月と比較して4月は3倍になった為、という事です。但し、ロシアの鉄屑業界団体は反対しているようです。
英国ミルトンキーに本社を置く「Waddington Europ社」がrPETを利用した新しい食品包装材料を追加した事を発表しています。最大85°Cに耐えることができ、電子レンジで使用出来ます。また普及している不透明な厚いポリプロピレンやクリスタルPET(cPET)のホットフィル容器とは異なりrPETで作られています。rPETの混入率は30%から100%まで、4種類の製品で分けられています。
▶ https://www.waddingtoneurope.com/tampervisible
既に幾つかのメディアでは報道されていますが、オーストラリア、ニュージーランド、太平洋諸島の地域を中心としたNGO/企業/政府が新しいプラスチック協定を立ち上げています。この協定は国際的なコンサルタント会社である「APCO」が「エレンマッカーサー財団」と「WRAP」と協力して開発し、「ANZPAC」と名付けられています。ほぼエレンマッカーサー財団のプラスチックに関するイニシアチブを踏襲しており以下が含まれます。
– 2025年までにプラスチック包装の100%は再利用可能、リサイクル可能、又は堆肥化可能にする
– ANZPAC地域内で効果的にリサイクルされるプラスチック包装を25%増やす。
– 地域全体でプラスチック包装のリサイクル材を平均25%にする。
▶ https://anzpacplasticspact.org.au/australia-new-zealand-and-pacific-islands-plastics-pact-launches-to-tackle-plastics-pollution-with-innovative-solutions/
Euractiveが伝えていますが、フランス国会が発表した報告書(OPECST)によると、世界規模で低炭素水素を生産するには、400基の1GW原子炉が必要になるとのことです。原子力はフランスのエネルギー生産の78%を占め、またフランスは原子力技術と濃縮燃料、再処理の輸出大国です。水素を生成する為には何れも膨大な電力が必要な為、低炭素で行う為には原子力に頼らざるを得ない、という事が彼らの主張のようです。欧州でも科学者の多くは水素を商業的にエネルギー源に利用する事にはかなり懐疑的です。
▶ https://www.euractiv.com/section/energy/news/report-low-carbon-hydrogen-production-needs-400-1gw-nuclear-reactors/