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世界の環境関連ニュース(2021年11月第3週)
リサイクルプラスチックの利用が、メーカーの株価にも影響を与え始めています。世界の市場速報とニュースを扱う代表的なウェブサイトであるMarket Screenerが、米国のイーストマン(NY証券市場:EMN)によるP&Gへのリサイクルプラスチックの供給を伝えています。専門サイトでは既に伝えられています。このリサイクル材はP&Gのハーバルブランドに利用されます。代表的な市場ニュースがリサイクルプラスチックの利用を取り上げるという事が、重要度を示しています。先週、米国で開催された2021プラスチック包装サミットでも、プラスチック条約が6ヵ月以内に国連を通じて協議されている、としており重要度が増しています。
▶ https://bit.ly/3n8FleX
英国政府の初期告書によると、COP26の開催に伴う総炭素排出量は102,500トン相当で、これは、英国の約10,000世帯からの年間排出量に相当する、としています。この量は前回2019年にマドリードで開催されたCOP25の2倍としています。英国政府はCOP26を「カーボンニュートラル」にすると約束していましたが、現実とはかけ離れた結果になるようです。COP26は終了する12日金曜日の18:00を過ぎても炭素削減と石炭使用中止をめぐり参加国での合意が取れず、宣言を出す事が出来ていません。
▶ https://www.bbc.co.uk/news/uk-scotland-glasgow-west-59248023
再生林木質バイオマス発電用燃料がCOP26で再生可能エネルギーとして生き残ったニュースです。COP26 の直前の10月21日には世界170団体NGOがバイオマス産業に対する「国際行動日」を設定し、森林バイオマスエネルギーを終わらせるよう求めただけでなく、英国のチャタムハウス(Chatham House)、ウッドウェル気候研究センター(Woodwell Climate Research Center)、米国のNRDC等のシンクタンクも同様の声明を発表しており注目されていました。しかし、化石燃料を終わらせる為には再生林木質ペレットはどうしても再生可能エネルギーから外せなく、木質バイオマス産業が勝利を収めています(欧州副委員長もこれを認めています)。このCOP26を前に世界最大の木質ペレット製造&需要家である英国のDrax社が、英国の与党と18回直接会合を持ち猛烈にロビー活動した事が伝えられています。
▶ https://www.washingtonpost.com/climate-environment/2021/11/10/eu-cop26-biomass-wood-emissions/
11月13日のCOP26で2015年パリ協定の第6条が一応の最終合意に至りました。具体的にはコンプライアンス(炭素)市場の二重計算の排除、炭素市場の適切な会計処理を確実にする強力なフレームワークの確立、CDMプロジェクトの繰り越し、等が含まれています。6条の合意について、自主的炭素市場の正当性を高めるイニシアチブが正式コメントを発表しています。自主的市場への扉が開かれる可能性があるという評価と、未だどのようなフレームワークになるのか見極めが必要という2つの評価がある状況です。
▶ https://vcmintegrity.org/3056-2/
コカ・コーラカンパニーが100%植物由来のPETボトルのPJを進める中で、その詳細についてPakcaging Europeが担当にインタビューをしています。技術的に可能でプロトタイプは製造出来るようですが、実際の商業ベースの販売はまだロードマップの無い状況です。代替材料は一気に大きな市場になる可能性があります。
既にプラスチックに関する来年の国際条約協議が現実味を帯びており、大手企業による削減、代替品の動きや、石油・化学メーカーのリサイクル進出は毎週のように発表されています。欧米とアジアの情報流通の差も反応の違いにあるようです。
▶ https://packagingeurope.com/the-inside-story-of-coca-colas-plant-based-bottle/
英国ではCOP26に関する総括のニュースが多く発信されています。FTは「国連の主導するCOPは失敗するように設計されている」という論調で、辛辣な内容を上げています。その他も「中途半端」な合意で曖昧さを残したまま、という内容の記事が多くあります。総じて脱炭素で世界全体が現実可能なソリューションが提供できない、という事が比較的明らかになった催しとなりました。事前の盛り上がり程の結果とならなかった大きな理由はそこにありそうです。European Scienceは集団心理による圧力が掛かった今回のCOP26を面白い視点で分析していました。
▶ https://www.ft.com/content/ae6a8e8f-94db-4f06-a377-343a84e9be4d
▶ https://www.theguardian.com/environment/2021/nov/15/ratchets-phase-downs-and-a-fragile-agreement-how-cop26-played-out
米国環境保護庁(EPA)が「2021年の国家リサイクル戦略」を発表しています。戦略では「強力かつ弾力性がある効果の高い都市の廃棄物リサイクルシステム」を構築することを目的としています。内容はリサイクルに大きく注力されています。EPAは「リサイクル目標」と「国家リサイクル戦略」を包括的な1つの計画にまとめています。今後、材料の生産、消費、使用、廃棄による気候影響を減らすという新しい目標を開発していきます。この新しい目標は全国的なリサイクル目標を補完するものになります。米国でも国全体としての目標値が設定されていく事になります。
▶ https://www.epa.gov/system/files/documents/2021-11/final-national-recycling-strategy.pdf
現在進行中で欧州議会による承認が将来あってから法規制となりますが、廃棄物に含まれる最も有害な化学物質である残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants :POPs)の規制強化のニュースです。今回の提案でペルフルオロオクタン酸(PFOAとその塩基、関連化合物、ジコホル、ペンタクロロフェノールとその塩基、エステル、が含まれています。また現在規制対象の別の5物質(物質グループ)の廃棄物についても規制を強化しています。既に英国ではPOPs規制が始まっており、ポリ塩化ビフェニルやテルフェニル(PCB / PCT)が含まれる可能性のある廃棄物(プラスチックや基板のプラスチック)への影響が出ています。
▶ https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_21_5552
▶ https://eur-lex.europa.eu/procedure/EN/2021_340
EV用バッテリーのカソード開発から英国の大手材料・開発メーカーのジョンソンマッセイ(JM)が撤退するというニュースです。JMはEV用高ニッケルカソード材料の商業化に取り組んで投資してきましたが、中韓にはコスト的に勝てず更なる投資を必要でしたが、回収の見込みが取れないという事が大きな理由のようです。JMがEVバッテリー分野から撤退すること言う事は、この分野で欧州勢がアジア勢を切り崩す事がいかに困難かを象徴する出来事に映ります。
▶ https://matthey.com/en/news/2021/battery-materials-announcement
▶ https://www.theguardian.com/business/2021/nov/14/battery-failures-like-johnson-matthey-risk-leaving-british-carmakers-disconnected
欧州委員会が新たな規制の対象となる3つの提案を採択しており、廃棄物輸送に関する規則が強化される事が正式に提案として決まりました。この提案では、「金属(鉄・非鉄)スクラップの輸出禁止」という事態は避けられたようです。更にまだ委員会提案なので、議会と理事会での審議があります。最大の論争は処理されたスクラップが「廃棄物」として扱われるのかという事でしたが、本提案では、廃棄物と同じ扱いになるようです。
別のEU指令により既に非OECD加盟国とは2国間での事前審査と許可、更に今回の提案でOECD加盟国についても「監視強化」「条件付き(持続可能性の証明)に対する監査対象」という事になります。委員会提案の真意は、やはり資源を外に出したくない、という事は確かなようです。
▶ https://ec.europa.eu/environment/publications/proposal-new-regulation-waste-shipments_en
▶ https://www.metalbulletin.com/Article/4016832/Scrap-and-secondary-Ferrous-scrap/EU-releases-proposals-to-restrict-metal-scrap-exports.html
▶ https://www.argusmedia.com/en/news/2274734-no-eu-blanket-ban-on-scrap-metal-exports?backToResults=true
欧州政府が森林破壊地域からの食料と木材の輸入を禁止する事が伝えられています。森林破壊地域からの製品輸入は27ヵ国に「拘束力のある規則(法律)」として適用されるよう動いています。EUの輸入企業は、大豆、牛肉、パーム油、ココア、コーヒー、木材製品が「森林破壊がない」と認定されていることを示す必要が出てきます。COP26サミットで「2030年までに森林破壊を終わらせる」という国際的な公約がありましたが、これに続くものになります。
▶ https://uk.finance.yahoo.com/news/eu-plans-ban-food-imports-123549585.html
FT等でも報じられていますが、大手企業のプラスチック削減の誓約を合計すると、2018年比で、2025年には20%バージンプラスチックの使用量が減少する、と伝えられています。それらのコミットメントは、各財団や国連環境計画からの最新の年次進捗レポートに示されている量となります。今年の初夏より世界的にいくつもの業界団体(多数の多国籍企業含む)や環境保護団体が、プラスチック環境汚染に対する国際条約を制定するよう呼び掛けており、2022年には制定に向け協議が始まると伝えられています。これらは、既に欧州でデファクトスタンダードとなっているモノが含まれており、時間のかかる法規制ではなく、国際条約として進みそうです。その時点で相当な動き(インパクト)になりそうで、2021年に大手が廃プラのケミカルリサイクルに投資した背景が理解できます。日本は法規制があるまで動かない、という姿勢なので、かなりインパクトがあると思われます。
▶ https://recyclinginternational.com/business/big-brands-cutting-virgin-plastic-use-by-20/46905/
廃棄物からのバイオ燃料を生産する世界のトップメーカーである「Enerkem社」が、木質成分から航空機用のバイオ燃料を製造する技術を開発した事を発表しています。今までは廃棄物、トウモロコシ、大豆等の大量に入用可能な原料に限られてきましたが、より入用が容易な森林バイオマスを利用できる事になります。Enerkemはロッテルダムプロジェクトで廃棄物の使用についてShellと協力しており、森林バイオマスは4番目の原料となります。発電燃料と合わせて、今後より一層の森林バイオマスの利用が増えた場合には持続可能性の問題が一番の焦点になると思われます。FSCのノウハウは重要なポイントになると考えられます。
▶ http://biomassmagazine.com/articles/18478/enerkem-produces-saf-from-forest-biomass
使用済みタイヤを原料化する技術を持つ大手企業の「Bolder Industries, Inc.」と、全米に35以上のタイヤリサイクル拠点を持つ大手の「Liberty Tire Recycling」が業務提携を発表しています。発表によると、Liberty Tireは世界最大級のタイヤリサイクル業者で年間2億本以上の廃タイヤを収集しています。またBolder Industries, Inc.は廃タイヤからの製品製造に年間6,000万本の廃タイヤが必要で、この数量は今後10年の計画で増える為、より多くの量が必要としています。油化や再生原料事業は投資額が多くなる為、稼働率を上げる為に安価で大量の原料を必要とします。
▶ https://bit.ly/3qMJmI7
EU委員会の廃棄物輸送規制の提案について、様々なメディアが取り上げています。域外輸出に「相手国の環境負荷を保証する」という条件が付く事になりましたが、逆にEU域内での廃棄物の移動は今以上に楽にできるよう、電子化で一元管理を行うようなプロセスになるようです。これによりEU域内での廃棄物輸送が活発化される事を目論んでいます。
▶ https://www.euractiv.com/section/energy-environment/news/europe-cracks-down-on-illegal-waste-exports-eases-intra-eu-trade/
複数の専門誌で取り上げられていますが、鉱業で世界2位の大手「リオティント」がスロバキアのEVバッテリーメーカーの「InoBat」に出資する事を発表しています。InoBatはセルビアを含む複数のギガファクトリーを建設する計画を進めています。リオティントはリチウム供給の大手であり、コバルト供給の大手グレンコアは今年「British Volt」に出資しています。後発の欧州バッテリーメーカーは持続可能性のあるグリーンな原料調達で中韓と差別化を図る事を狙っており、このような取り組みが行われています。
▶ https://www.riotinto.com/news/releases/2021/Rio-Tinto-invests-in-InoBat