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世界の環境関連ニュース(2021年10月第4週)

世界の政策に影響を与えるワールドエコノミックフォーラム(The World Economic Forum)が、同フォーラムで持つ「低炭素排出技術イニシアチブ(Low-Carbon Emitting Technologies Initiative (LCET))」の調査・知識共有を実装(技術を実現化)する事を発表しています。2023年末までには、実装を行う、としています。イニシアチブには、世界的な化学企業であるDOW、BASF、ソルベイなどの多国籍企業が協力をしています。この実装により、官民パートナーシップを促進、各企業間の協力を可能にします。今後、化学系企業の排出削減が大きな流れになりそうです。
https://www.weforum.org/projects/collaborative-innovation-for-low-carbon-emitting-technologies-in-the-chemical-industry

「Nextek Limited社」が主導するPPリサイクルプロジェクトである『NEXTLOOP』は、包装に印刷されたマーカーを使用して食品グレードのプラスチック包装廃棄物を選別するテストを行い、最大処理速度でも99.9%の選別精度を達成したことを発表しています。テストはドイツのトムラ(TOMRA)のテストセンターで行われました。
このテストは、食品グレードのポリプロピレン(FGPP)の新しいリサイクルイ方法を開発するNEXTLOOPPのPJTの一環です。この技術は、1時間あたり2トンを超える処理速度で、プラスチック包装(牛乳や漂白剤のパッケージ)を特定できます。TOMRAによると、1回目のパスで分別制度が99.3%、2回目のパスでは99.9%まで精度を上げられる、という事です。
https://www.packagingnews.co.uk/news/materials/flexible-plastics/sector-focuses-pp-technology-boost-plastic-recycling-27-05-2021

カーボンオフセットの国際的な標準化により市場が急拡大するという予測が一般紙でも頻繁に取り上げられるようになりました。カーボンニュートラルを実現する為、特にスコープ3の排出量を削減する為には、現時点では、企業はカーボンオフセットを使用する必要があります。現在、自主的なカーボンオフセット市場をけん引している金融機関は、炭素の会計処理とオフセットを標準化する為にロビー活動を続けており、COP26以降に動きがあると考えられています。この動きは政治的なロビー力の強い欧米の金融機関が牽引していおり、標準化とガバナンスに関する動きが非常に活発になっています。
https://www.cnbc.com/2021/10/21/carbon-offsets-are-necessary-market-needs-to-grow-fast-b-of-a-exec.html

Nucor Corp、Steel Dynamics、Commercial Metalsに続き、先日大手スクラップ会社を買収したCleveland-CliffsIncが2021年Q3の業績結果を発表しており、記録的な市場最高益を記録した事を報告しています。米国でこのセクターは、好調な製品需要と金属価格の上昇によってかつてない収益を生み出しています。同社のQ3の財務結果は、売上60億ドル、経常利益13億ドルに達しており、これは2019年の年間売上20億ドルから大幅に上昇しています。2021年の年間売上予測は210億ドルに達する見込みとなっています。
https://www.clevelandcliffs.com/investors

マクドナルドとスターバックスが、プラスチック包装のサーキュラーエコノミーを推進する「NextGen Consortium」に1,000万ドルを投資する事を発表しています。両社は食品包装のサーキュラ―エコノミーを推進・改善し、食品業界の廃棄物の課題に対処する、としています。NextGen Consortiumは、米ニューヨークのクローズドループパートナーズ(Closed Loop Partners)が主催するもので、発起人には上記2社が含まれます。この投資により、今後NextGen Consortiumの活動を拡大し、実行可能なソリューションを推進する為に、多国籍企業、自治体、リサイクル業者、メーカーを含めた全てのバリューチェーンで機能する活動を行う、と報告しています。既に大手多国籍企業はESGに対する投資を行わないと企業価値を維持できない状況で、投資家が望む方向としてプラスチックのサーキュラーエコノミーは最重要課題となっています。
https://bit.ly/3BgklXs

フィンランド石油精製とマーケティング会社の「Neste Oyj」と、ルクセンブルクのプラスチックリサイクルと樹脂原料販売会社である「Ravago」の2社が、オランダ(フリシンゲンの北海港)にプラスチック廃棄物のケミカルリサイクル工場を建設する合弁会社を設立しています。処理能力は2030年までに年間20万トン以上を目標にしています。2020年にNeste Oyjはフィンランドの石油精製所で油化処理による試験を実施しています。
https://bit.ly/3vFbj52

COP26を前に英国の首相であるボリスジョンソンが「プラスチックのリサイクルは(プラスチック汚染)の解決にならない」という発言をして、大問題になっています。樹脂メーカーとリサイクル産業は批判していますが、プラスチックに反対する団体は賛成する、という外部を巻き込んだ騒動になっています。欧州でも米国でも複数の調査でプラスチック汚染を減らす根本解決策はプラスチックの生産全体量を削減する事、という評価で一致していますが、それは(現代の消費社会では)「不可能な事」と認識されています。その為、石油化学や樹脂メーカーが必死でESGによる企業価値を維持する為にリサイクルに急速に投資しています。ある意味、宰相が「口を滑らして本音を言ってしまった」失言めいた扱いになっています。
https://www.bbc.co.uk/news/uk-59039155
https://www.bbc.co.uk/newsround/59047754

EUで協議されている新たなバッテリーの規制は、一部がEU指令から格上げされ、法律になる予定です。協議中の法案では、製品の設計から寿命までのライフサイクルの全ての段階を法制化する予定です。その法律の立案担当である欧州議会の議員がEuractiveのインタビューに答えています。既に欧州自動車工業会は、ポジションペーパーにより懸念を表明しています。EUのバッテリー規制の提案ではバッテリーのコストが上がり、法律になれば、電気自動車がより高価になる、としています。
https://bit.ly/3jzqYhp

英国の「Plastic Energy Ltd社」、米国の「Freepoint Eco-Systems LLC社」、そしてフランスのエネルギー会社「Total Energies」の3社が、米国のテキサス州にプラスチック廃棄物のケミカルリサイクル工場を建設する為のパートナーシップを結んでいます。使用技術はPlastic Energy Ltd社の特許技術で、製品は『TACOIL』と呼ばれる分解油で、リサイクル原料として使います。TACOILは、フランスのTotal Energies社が製品製造に利用します。主な製品は食品包装となります。機械リサイクルでは食品包装向けのリサイクル樹脂は利用ハードルが非常に高い為、このエリアを狙ってのケミカルリサイクルが最近のトレンドです。
https://plasticenergy.com/plastic-energy-freepoint-eco-systems-totalenergies-advanced-recycling-project-in-the-us/

欧州リサイクル産業連盟(Euric)を含む300の業界団体と企業が、欧州議会議長とEU委員宛てにEUの廃棄物輸送規則の今後の改正について、自由貿易を維持するよう、書簡を出しています。現在の改正案では、廃棄物由来の材料の輸出が全面的に制限されることを恐れてのことです。欧州ではこの問題が大きな関心事で、WEEEやEVの廃バッテリー(由来のリサイクル原料含む)を域外に出さないような法規制が協議されています。日本でも輸出の水際での検査が厳格化されている事もあり、リサイクル資源確保を法的な拘束力のあるものにする事にトレーダーから懸念が持ち上がっています。
https://www.euwid-recycling.com/news/business/single/Artikel/european-recycling-industry-calls-for-free-trade-with-recycled-raw-materials.html

カナダを中心に、米国、メキシコに40か所以上の拠点を持つスクラップ会社の「Triple M Metal」とカナダの鉄鋼メーカー「Algoma Steel Group Inc.」が電気炉への転換を目論みJVを設立しています。JVは「TM Metals Inc.」です。Algoma Steelは、現在最大280万トンの生鋼生産能力を持っています。転炉(BOF)を主体とした自事業構成ですが、今後は電炉へ多額の投資をする可能性を発表しています。Triple M Metalは、親会社がGiampaolo Group Inc.で、Matalcoという名前で二次アルミ合金を製造する会社を持っています。
https://www.algoma.com/algoma-and-triple-m-metal-establish-metals-sourcing-joint-venture/

欧州リサイクル産業連合(EURIC)が、欧州域外に廃棄物由来の原料を輸出できない法案を検討している欧州委員会に対しPosition Paperを発行したのに続き、新たにELVに対する書簡を発行しています。委員会は現在ELV指令を再検討しています。委員会は2022年に指令の見直しの為の立法案を提示する予定です。改訂した指令には不明となった車両への対応、将来リサイクル可能な車両のエコデザイン、リサイクル材料の取り扱い、サーキュラーエコノミーの実施に対する公的補助金が検討されており、それらの規定に欧州リサイクル産業連合(EURIC)の意見を取り入れるよう、働き掛けています。
https://www.euric-aisbl.eu/

アル・ゴア米元副大統領の投資運用会社(Generation Investment Management)が来週から始まるCOP26を前に、気候変動の為の新しい「資産ファンド」を立ち上げる予定です。名前は「Just Climate」で、一般投資家(機関)が参画しており、マイクロソフト気候イノベーション基金、イケアの親財団と提携しているIMAS財団、ハーバード基金に投資するハーバード管理会社、ゴールドマンサックスのインパクト投資子会社、ホールキャピタルパートナーズ、アイルランド共和国の投資ファンド等、そうそうたるメンバーが参加しています。

ロイターの欧州版がプラスチック廃棄物の熱利用で、特にセメント生産燃料向けの特別調査レポートを発行しています。恐らくこうした報道の連続で石油・化学・生活用品メーカーがよりケミカルリサイクルに投資する動機が増えると思われます。
https://reut.rs/3bfMu6y

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