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世界の環境関連ニュース(2021年10月第1週)
欧州や英国ではプラスチック包装税が予定されていますが、米国でもバージンプラスチックに課金する法案が提出されています。プラスチック使い捨て用品の販売、及びバージンプラスチック単体での販売に、重量1ポンドあたり20セントの料金を課す、というものです。法案は「REDUCE(Rewarding Efforts to Decrease Unrecycled Contaminants in Ecosystems)」という名前で、上院議会に提出されています。米国は州によって製造者責任の法案も出ており、今後リサイクルへのインセンティブが欧州並みになりそうです。米国の場合、プラ廃棄物の量が多いのと、汚れていたり混入物が多いのでケミカルリサイクルと、その事前選別の投資が増えそうです。
▶ https://reut.rs/3zYTuys
EUと米国による「EU-米国貿易技術評議会」が発足(初会合を開催)しています。「非市場的な商慣行に対処」する事を含む共通の戦略策定を目指すことで合意しています。これは、中国を念頭に置いている、とされています。半導体供給網の強化や人工知能(AI)を含む5分野、10個のワーキンググループを作る事が発表されており、クリーンテック、人権、輸出管理等が含まれています。これらの「技術」標準は、今後両地域以外の他国にも貿易において影響が出ると思われます。
▶ https://bit.ly/2Yff452
世界の古着マーケットの構造と環境汚染について、アルジャジーラがビデオ番組を作っています。古着によるアフリカや南アジアでの環境汚染は問題となっていますが、そこでの雇用も大きいというジレンマがあります。今、欧州ではマイクロプラスチック問題もあり新しい服を買う回数を減らし、メーカーがリサイクルする事を望む動きが活発になっています。ファッション産業の世界の総炭素発生量は、実は航空と海運を合わせたものよりも大きいのですが、排ガスを直接排出しないので、ほとんど法制度化もされていません。
▶ https://www.aljazeera.com/program/people-power/2021/9/30/dead-white-mans-clothes
▶ https://www.aljazeera.com/program/101-east/2021/9/30/asias-pandemic-waste-emergency
紙ベースの包装新素材を開発するスウェーデンの「PulPac」が、『4evergreenアライアンス』という組織を発表しています。目的は2030年までに繊維(紙)ベースの包装品のリサイクル率を90%に上げることを目指しています。アライアンスには、パルプ、製紙、板紙の各メーカーとリサイクル業者が含まれ、International Paper、MM Group、Stora Enso、UPM、Smurfit Kappaなど大手も名前を連ねています。この提携は、ブリュッセルに本社を置くCEPI(ヨーロッパ紙業連盟)が主催しており、CEPIには大手企業である、ペプシコ、ネスレ、ダノン、IKEA、プロクター・アンド・ギャンブル等のグローバルブランドも含まれています。プラスチック代替材料として紙ベースの包装が大幅に増えていく中、このようなアライアンスが誕生していくという流れは、サーキュラーエコノミーが先行する欧州の流れの1つです。プラ法を経て欧州で代替材料の開発が大幅に進んでいますので、日本も2-3年で流れが来る可能性があります。
▶ https://www.pulpac.com/news/
既に大手メディアで速報が伝わっていますが、台湾の「Hon Hai Technology Group(Foxconn:フォックスコン)」が本格的にEVに進出する為に米国オハイオ州のスタートアップ企業「Lordstown Motors Corp」と同社の工場買収を合意した事が伝えられています。米国エネルギー省の融資を受ける予定である事が伝えられていました。フォックスコンは、Lordstown MotorsのEVプログラムに共同で取り組みます(委託生産者として)。合意の一環として、両社は「FoxconnがLordstown Motorsの主要なモーター組立ライン、バッテリーモジュール、梱包ライン、知財を除く、その他の施設を購入する」という最終合意につて交渉している。買収額は2億3000万ドル」としています。 この買収によってフォックスコンはEV小型商用車市場で北米での存在感を示すことになると予測されています。Foxconnブランドで知られているHon Haiは、PC、テレコム、電子機器の委託製造サービス(EMS)により、今年のフォーチュン・グローバル500企業リストで22位の巨大企業です。フィスカーも同じですが、既にEV路線を発表しているフォックスコンは、家電と同じくEMSをEVに本格的持ち込んできました。
ウクライナ内閣が9月30日に法令草案を発表。2022年末までウクライナ国外への鉄スクラップの輸出を禁止することを提案している事が伝えられています。世界的な価格上昇で地元の生産者に原材料が不足する恐れがある事が理由のようです。ウクライナを通じて東欧・ロシア屑も出荷が含まれているものもあるようなので、今後の流通に変化が出る可能性があります。米国電炉の能増もあり、地域毎の発生国のスクラップ上昇の下地が整いそうです。
米国電炉とリサイクル大手の「シュニツァー・スチール・インダストリー」が2021会計年度の最終四半期(第4四半期)の結果を発表しています。前四半期からの収益は若干減少していますが、引き続き財務結果は好調を維持している事が伝えられています。リサイクル金属の市況は堅調、鉄分野の平均販売価格は2008年以来の最高水準に達し、非鉄市場も数年ぶりの高値圏で、引続き高収益を確保した事が伝えられています。ポートランドでの電気アーク炉(EAF)製鉄所も堅調で、鉄鋼製品の市場販売価格も需要増で上昇、過去10年で最高値圏に達した、としています。
▶ https://www.schnitzersteel.com/company/investors/news-release-details/21291
インドでも商品グレードのPETとポリオレフィンの100%リサイクル再生材料の生産に乗り出す企業が出ました。投資額は1,000万ドル(約11億円)。企業名は「Srichakra Polyplast社」で、プラスチックリサイクルと廃棄物管理の大手企業です。インドのプラスチック廃棄物のリサイクル率は25%程度で、リサイクル材が高品質では無く、再利用のレベルは低いのが現状です。Srichakra社は、今回の投資でStarlinger社のRecostarPET 165 iV +というシステムを導入。このシステムはリアクター(熱分解)による短鎖化を行うケミカルリサイクルの一種をシステムに内蔵しています。
▶ https://www.starlinger.com/en/recycling/recostar-product-line/recostar-pet-food/
▶ https://srichakra.in/
米国の大手電炉メーカーである「Nucor」が、ネットゼロ炭素鋼製品のブランド「Econiq」を立ち上げた事を発表しています。自社の製品全域にわたるブランドで、生産にはスクラップと再生可能エネルギーを使用します。再生可能エネルギーで対応できないスコープ1と2の部分については、「カーボンオフセット(クレジット)」を利用します。米国の鉄鋼業界で初めての大規模なネットゼロ鉄鋼製品ブランドになります。
▶ https://www.nucor.com/news-release/#item=18596
現在、欧州委員会は廃棄物の輸出に関する新しい規制案を制定中で、期限が11月17日となっています。特にWEEE(電子廃棄物)の電子基板はプラスチックが含まれる為、プラスチック廃棄物輸出規制を満たす条件が加えられるという事が議論されています。また、EUの重要な原材料(EU Critical Raw Material)のリストにある金属や原料を含む廃棄物への規制が一層厳しくなるとの見方が優勢です。この新しい規制案の内容次第では輸出業者は大きな影響を受ける為、かなり注目されています。
▶ https://www.euwid-recycling.com/news/policy/single/Artikel/eu-commission-to-table-waste-shipment-proposal-in-november.html
「British Steel(ブリティッシュスチール)」が2050年までに自社の鉄鋼製品カーボンニュートラル化し、2030年及び2035年までにCO2排出量を大幅に削減する為の様々な技術に投資することをコミットしています。ロードマップでは炭素回収貯留、水素、スクラップ利用の増加、電気アーク炉などの技術の評価とそれらへの投資が含まれています。今やグリーンスチールへのロードマップは標準化されつつあります。
▶ https://britishsteel.co.uk/news/british-steel-unveils-low-carbon-roadmap-with-net-zero-pledge/
世界最大手の化学メーカーである「Dow」が脱炭素化とプラスチックのケミカルリサイクルへの幾つかの投資を発表しています。業界トップ、更に米国企業の動きとして、今後の流れを見る上で、注目すべきニュースです。総投資額は30億ドル(3300億円)以上となっています。投資にはオランダにケミカルリサイクルの第2の工場を建設する事も含まれ、オランダのフエニックス・エコロジー・グループと契約も含まれています。また、プラスチック廃棄物由来の中間原料(オイル)を精製するためにオランダのガンバー石油(ロッテルダム)との合意も発表しています。同社はまた、主要なヨーロッパ、及び米国の各工場で国際持続可能性炭素認証(ISCC)を取得する予定です。化学メーカーがプラスチックのケミカルリサイクルに参画(投資)する流れは、今後も増えていくと見られています。
▶ https://corporate.dow.com/en-us/news/press-releases/dow-outlines-investment-plans-to-deliver—3b-of-additional-unde
米国「MassRoots社」が、東部のスクラップ業者の「Empire」の買収を発表し、更にEmpireを通じて別のスクラップ業者を買収する見込みを発表しています。この買収により、現在、店頭市場(OTC)で取引されているMassRoots株は、ナスダック、もしくはニューヨーク証券市場にアップグレードする予定だと伝えています。
同社CEOによれば、「米国でも金属リサイクル業界は統合の機が熟している」と判断されており、上場を通じた資金調達とより一層の業務拡大を目指す、としています。既に米国での電炉投資による生産能力増強は2025年までに1000万トンを超えており、東南部が中心の為、今後もこのような動きが継続されると見られています。
▶ https://bit.ly/3Dor9Uz
初めての「EU持続可能性投資サミット」(EU Sustainable Investment Summit)がビデオ開催されています。ヨーロッパのグリーンボンド市場は約1兆ユーロ(130兆円)のValueで、これは米国の2倍、アジア太平洋市場の3倍です。エネルギー転換を中心とする投資への話題が中心のサミットで、来月開催されるCOP26、今後のG7とG20での持続可能な投資の支援を働きかけるものとして位置付けられています。
▶ https://ec.europa.eu/economy_finance/sustainable-investment-summit-2021/index.html