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世界の環境関連ニュース(2021年4月第4週)
米オレゴン州で興味深い法案が上院で審議されています。
法案は「SB 803A」で、内容は自動車の「排ガス触媒」が取り外された車両は自動車販売業者または所有者を除き購入禁止、また金属屑業者が触媒を(第三者から)購入または受領することを禁止、するものです。
簡単に言えば、解体業者が第三者から車両から取り外された触媒単体(マフラー一式)だけを購入取得することが禁止されます。購入の為には、別の申請が必要となるようです。自動車触媒に使用されるパラジウムには2020年問題というものがあり、2020年には世界全体で生産量と在庫量が需要を大きく下回る事が明確でした。それまでは何とか各国にある在庫で手当てしていました。コロナの影響で1年遅れましたが、ガソリン自動車の生産が増加し、初めてパラジウムは過去最高値を更新し続け、更に上昇する事が予測されています。生産国はロシアと南アフリカに限られ、しかも生産量が少ない為です。触媒だけを車から取り外し盗難する事が増加している為、解体業者の購入を禁止するという事です。
▶ https://olis.oregonlegislature.gov/liz/2021R1/Measures/Overview/SB803
元々オーストラリアの大学の研究からスピンオフした独自のプラスチックのケミカルリサイクル技術を持つ英「Mura Technology」が、プラスチックの世界最大のメーカーの1つである「DOWケミカル(ダウ・ケミカル)」とのパートナーシップを発表しています。Mura社の持つHydro PRSケミカルリサイクル技術をスケールアップして、プラスチックのリサイクルを事業化する事を目的としています。場所は確定していませんが、英国のTeesideのダウ工場になるようです。プラスチックのケミカルリサイクルは、欧米の大手石油化学/化学工業メーカーが相次いで進出しています。
▶ https://muratechnology.com/news/mura-announces-partnership-with-dow-chemicals/
欧州では銅精錬の大手「Aurubis社」と、リサイクル大手の「Remondis」の金属リサイクル子会社である「TSR」が合弁会社を設立する事を発表していましたが、欧州委員会がこの合併を承認しています。「Cablo GmbH」という会社名で、主に銅ケーブルから銅を回収します。先日もお伝えしましたが、Business InsiderのWebサイトに掲載されたGS社のレポート「Copper is the new oil(銅は新たなオイルとなった)」によると、2022年中期までに11,000ドル、2025年までには15,000ドルに上昇し、今後4年間の供給不足は年間で60%以上になる可能性がある、としていました。一部では、投機マネーが流入する事も懸念されています。
▶ https://www.euwid-recycling.com/news/business/single/Artikel/eu-commission-clears-aurubistsr-cable-recycling-joint-venture.html
英国で億万長者の「Issa兄弟」が所有する英国の大手スーパーマーケット「Asda(アスダ)」が食品包装からのプラスチック量削減プロジェクトの一環として、全鶏肉商品の包装プラスチックを削減したものに変更する、と発表しています。同社は2018年以来、既に9,000トンのプラスチックを削減しています。2025年までに自社ブランド製品から30億個のプラスチック包装を削減することを約束しています。多くの欧州企業が2025年までのプラスチック・ロードマップを事業戦略に入れており、その一環です。英Asdaは、最近まで米ウォルマートの所有でした。
▶ https://www.agriland.co.uk/farming-news/asda-to-launch-new-packaging-range-to-cut-down-on-450t-of-plastic-waste/
スエズの英国部門が、イギリス全土の地方自治体のリサイクル(率)データのインタラクティブ・マップをリリースしています。マップは下のリンクからもダウンロードできます。下のページの地図の各自治体をクリックすると前年比と合わせたリサイクルの詳細がポップアップされます。地図上の各自治体は、前年とリサイクル率の伸びを比較して、色分けされています。2020年に英国政府は、「サーキュラーエコノミーパッケージ」を発表して、2035年までに全国平均のリサイクル率を65%に設定しています。
▶ https://www.suez.co.uk/en-gb/our-offering/communities-and-individuals/recycling-in-the-uk
かなり厳しいロックダウンをしているドイツでも感染症例が減らず、5月末まで都市毎にロックダウンを継続するようです。ドイツでは30歳以下はアストラゼネカのワクチンはしない方針で、遅れが指摘されています。又、本日欧州政府がアストラゼネカ社に法的措置を取ると報道されています。ワクチン接種を増やす為、欧州ではJ&J製のワクチン接種が始まっています。欧州では、コロナ、気候変動、ロシア安全保障のニュースが殆どです。
▶ https://www.euractiv.com/section/coronavirus/news/germany-faces-lockdown-until-june-as-curbs-fail-to-push-down-cases/
プラスチックパッケージの設計、製造に於いてAIを利用した支援サービスを行うドイツ企業があります。名前は「Digimind社」といい、企業のプラスチックパッケージ向けプラットフォームを提供しています。プラットフォームでのサービスは、設計、製造エンジニアリング、バーチャル・テスト、そして協力会社を探すエンド・ツー・エンド・ツールのマッチングサービスの提供です。この様なAIクラウドベースの統合プラットフォームは業界では初です。この種のサービスは、欧州ではサービス業や製造業ではかなり浸透してきましたが、パッケージ業界向けでは初となります。
▶ https://digimindlabs.de/
米ミシガン州による新たなリサイクル推進計画の立上げのニュースです。発表された「NextCycle Michigan」というイニシアチブでは、ミシガン州のリサイクルシステム改善を目指し、数百万ドルを提供します。州の環境庁の発表では、リサイクルを支援で490万ドルの助成金を供給する、としています。応募は、経済界、政府機関、業界団体、大学等、様々な分野から可能です。このプログラムは廃棄物の削減、回収、処理、リサイクル、再利用等、6つのカテゴリーでリサイクルと回収のイニシアチブをサポートします。
▶ https://www.nextcyclemichigan.com/
ここ数日で欧米のニュースになっているのが、自動車の触媒の盗難です。プラチナ、パラジウム、ロジウムの価格は過去最高を記録するまで急騰しており、触媒コンバーターの盗難が増加している事が伝えられています。現在はこれらの白金系ですが、いずれEVとグリーンテック化が進めば銅やレアアース系でも同じ事が発生する可能性があります。
▶ https://news.sky.com/story/catalytic-converter-theft-drivers-warned-to-protect-their-cars-as-value-of-precious-metal-rhodium-soars-12287717
AIとロボットを使った廃棄物選別技術を開発する米「AMPロボティックス社」が、混合廃棄物の材料特性を評価するソフトウェアを発表しています。このソフトは混合廃棄物から画像認識技術を通じてリサイクル可能な物を認識して分別する為に使われます。「AMP Clarity™」というソフト名で販売されるもので、様々な製品パッケージの色、模様やテクスチャ、形状、サイズ、ブランドラベルを認識して、材料とそのリサイクルの可能性を識別します。学習機能により、これらを継続的に追加していきます。この種のソリューションは既に実用段階に入っています。但しメーカーのフィールドテストは比較的先進国の綺麗な廃棄物で行われており、実際の汚れた廃棄物での性能は、今後の課題の為、進捗を確認していくべき事案となっています。
▶ https://www.amprobotics.com/newsroom/amp-robotics-launches-material-characterization-solution-to-improve-recycling
フランスの水と廃棄物管理の世界最大手「ヴェオリア社」のスエズ買収が確定し、ヴェオリアが買収しないスエズのフランス国内の廃棄管理と水資源管理をするスエズの(新)会社にドイツ最大の廃棄物管理会社である「Remondis社」が出資する、と伝えられています。欧州のサーキュラーエコノミー行動計画が進むにつれ、業界も大手から少しずつ再編している事が伺えます。今後、廃棄物はサーキュラーエコノミーの行動計画でリサイクル成果物は資源としての価値が大幅に上がる事から、欧米では廃棄物管理会社の大型買収が進んでいます。
▶ https://www.euwid-recycling.com/news/business/single/Artikel/remondis-seeks-to-buy-stake-in-new-suez.html
パッケージに関するイノベーションのレポートがパッケージを専門に扱うウェブサイト「Pack Hub」より発行されています。「Global Packaging Trends Compendium 2021」というレポートで、550品の新技術を利用したパッケージ製品の評価をしています。注目を集めているのは、以下になります。
– 健康関連製品のブランドPrimal Kitchen: 米産のサトウキビをベースにした新しい卵包装。Thrive Market、Walmart、Whole Foods、Wegmansなどの小売店で採用されています。
– アラブ首長国連邦の(国営)新興企業:ヤシ廃棄物の繊維を使った包装。堆肥化可でラテックスにてコーティング可能。ラテックスは、堆肥化に影響を与えない天然資源を利用。材料は約90日で堆肥になる。
– エストニアの新興企業Woola:羊毛から堆肥化可能な緩衝包装を製造。エストニアでは毎年153トンの羊毛が廃棄されている。
– 米国の美容ブランドEach&Every:同社デオドラント製品にサトウキビを原料としたパッケージを発売。パッケージは、廃品回収を通じてリサイクルする事も可能。
何れもプラスチックの削減が目的となっています。
▶ https://www.thepackhub.com/services/global-packaging-trends-compendium-2021/
欧州で鉱業と精錬の最大手である「ユミコア(Umicore)」が、決算情報をリリースしている。内容は2021年の業績上方修正で、調整後のEBITが10億ユーロ(およそ1300億円)に達するとしています。その内、貴金属価格の上昇に関連した利益が約2億5,000万ユーロ(320億円強)あり、リサイクル(事業)が主な理由としています。触媒については、2020年比2倍以上の調整EBITが見込まれている、という事です。2006-2008年時の投機資金の流入による金属バブルでは無く、エネルギーと産業構造の転換に伴う膨大な(貴・非鉄)金属需要増(と供給バランス)が要因の為、この傾向は暫く続きそうです。欧州でも業界の再編や統合が加速すると推測できます。
▶ https://www.umicore.com/en/newsroom/umicore-off-to-a-very-strong-start-in-2021-and-maintaining-strategic-course-of-action/
フランスの国際エネルギー機関(IEA)が発表したEV販売に関するレポートを複数の欧州メディアが伝えています。世界の自動車産業は2020年に売上高が16%減少したが、EV市場は40%以上の成長があった、としています。但し世界のEV販売には大きな格差があり、ロシア、南アメリカ、アフリカでは販売が殆ど無く、厳しくなるCO2排出基準と補助金政策のある欧州と中国で伸びている、としています。この格差構造を理解する事は大変重要です(天然資源の豊富な地域ではEV化は進まない)。2030年迄にはバッテリーの価格が下がり、EVが化石燃料車と同等のコストに達すると予測していますが、業界内部では技術的なブレークスルーが必要との意見が多いのが現状です。
▶ https://uk.news.yahoo.com/global-ev-sales-accelerating-government-051859000.html
スキンケアの「ニベア(Nivea)」で有名なドイツの「バイヤスドルフ社」が、ニベア製品で再生可能なプラスチックを使うボトルとパッケージの採用を始めています。同社は「Care Beyond Skin」という包括的な持続可能性戦略を採用しており、プラスチックに関しては2025年までにパッケージの100%を再利用可能、詰め替え可能、又はリサイクル可能にし、R-プラスチックの使用率を30%に増やし、バージンプラスチックを50%に抑えるとしています。持続可能性やサーキュラーエコノミーは、欧州の大手企業では事業戦略の柱の1つとして気候変動対策と並んで重要視されています。
▶ https://www.beiersdorf.com/newsroom/press-releases/all-press-releases/2021/04/22-Beiersdorf-launches-first-climate-neutralized-NIVEA-products-and-strengthens-climate-engagement