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世界の環境関連ニュース(2021年4月第3週)
欧州のガラス業界団体向けに様々な技術を提供している「Glass Future」が、ジョニーウォーカー等のブランドを持つスピリッツ大手の「Diageo社」とガラスメーカーの「Encirc」と協力して飲料ガラス瓶の製造における二酸化炭素の発生量を90%削減できる工程を開発した事を発表しています。ガラス溶解に於ける燃料を変更する事で達成しているとしていますが、詳細は明らかにしていません。ガラスはリサイクル可能ですが、溶解再生にエネルギーを使う事から新しい取組としています。
▶ https://www.glass-futures.org/diageo-collaborates-on-innovation-trial-to-make-most-sustainable-glass-scotch-whisky-bottles-ever
EU政府による大規模金融政策の概要が今週EU委員会のHPで発表されています。「Next Generation EU(次世代EU)」というもので、複数年に亘る資金供給で計約225兆円(1.8兆ユーロ)を主にグリーンとデジタル化に投資します。緊急性の高い資金供給向けでは、2026年末までに8,000億ユーロを調達可能です。EU加盟国は、この資金を有利な条件で助成金又は融資として受け取る事ができます。アメリカでも欧州でも大規模な緩和が続きそうです。
▶ https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/speech_21_1743
欧州復興開発銀行(EBRD)がポーランドの廃車と電子機器のリサイクル業者である「エレメンタル・ホールディング・キャピタル・グループ」に、2,500万ユーロ(約31億5000万円)を貸し付ける事が報じられています。主にEV車用やEモビリティ用の電池と基板のリサイクル施設への投資となります。この新工場は、ポーランド国立研究開発センター(NCBR)によってサポートされて最先端の革新的な技術を使用するという事です。また同プロジェクトは、台湾の-EBRD技術協力基金とスペイン(公的研究所)が提供する技術サポートが含まれる、としています。同社のIR情報ではまだ発表されていませんが一部の専門誌で伝えられています。ポーランドは欧州の電池ハブを目指し、政府を上げてメーカーの誘致をしています。
▶ https://elemental.biz/en/page/about-us/
欧米では、EV用リチウムイオン電池は製造から材料供給とそのサプライチェーン構築の競争になってきています。貴金属化合物等の化学製品の開発製造の世界的なメーカーである英「Johnson Matthey(ジョンソン・マッセイ:元田中金属のパートナー)」が、4月19日に同社の技術eLNO(ニッケル・リッチのカソード材料)の工場をフィンランドに作る事を発表しています。フィンランドの鉱業出資管理会社である「Finnish Minerals Group」とのパートナーシップとなります。材料調達では、フィンランドとロシアの製油所からニッケルとコバルトを供給する「Nornickel」と契約を結び、またチリの「SQM社」のから水酸化リチウムを調達します。工場は革新的な排水処理を採用し、再生可能エネルギーを動力源とする持続可能性の新しい基準を設定する、としています。欧州では重要な原材料(CRM)が設定されており、LiB電池の材料であるコバルトやリチウムが含まれています。
又、LiBには2024年7月からカーボンフットプリントの情報開示も義務化される予定であり、それらにも対応した動きです。
▶ https://matthey.com/en/news/2021/second-elno-plant-and-strategic-partnership-announced
既に一部では報道されておりますが、米ゼネラルモータース(GM)と韓国のLGエナジーソリューションが23億(約2500億円)ドルを出資して、テネシー州に70GWh規模のLiB工場を設置する事を正式に発表しています。これは、現在のテスラ/パナソニックのネバダ州の工場の生産規模の凡そ2倍となる予定です。生産される電池の詳細が明らかになっており、少コバル、高エネルギー密度、単一7共通セルで、大判ポーチスタイルのセルをバッテリーパック内に垂直/水平に積み重ねることができる設計が特徴という事を発表しています。GMは、既に2021年の70億ドルを含め、EV及びAV製品開発に270億ドル以上を投入し2025年末までに30種類のEVを世界で発売、その3分の2以上を北米で発売する事を発表しています。
▶ https://media.gm.com/media/us/en/gm/home.html
PS(ポリスチレン)の製造では世界最大手の2社である 独「INEOS Styrolution」 と米「Trinseo」がケミカル・リサイクル技術のパートナーとして英「Recycling Technologies」を選び、パイロットプラントを英国で2022年に建設する事を発表しています。Recycling TechnologiesはPSや軟包装プラスチック廃棄物をケミカル・リサイクルする技術開発を行う新興企業です。同社はエレンマッカーサー財団(英)をパートナーとしてProject Lodestar、石油化学の大手である「トタル(仏)」や飲料大手のネスレ他複数社と共同で「Project Fuscia」という難リサイクル廃プラスチックのケミカル・リサイクルを行うプロジェクトを既に立ち上げています。欧州ではプラスチック包装への製造者責任が課される事になっており、PSを含むリサイクルが困難な軟包装材のリサイクルの切り札として、ケミカル・リサイクルの必要性が高まっています。コスト、エネルギー消費、廃棄物集荷の問題から、ケミカル・リサイクルはリサイクラーの事業ではなく、石油化学メーカー、製品メーカー、そしてリサイクル技術を持つ会社との共同事業が主流となっています。
▶ https://recyclingtechnologies.co.uk/2021/04/ineos-styrolution-recycling-technologies-and-trinseo-progress-plans-for-the-first-polystyrene-recycling-plants-in-europe/
英国政府は、2035年までに二酸化炭素排出量を78%削減(1990年比)すると発表しています。肉や乳製品の削減を強いられる事も報じられています(飼料の生産や輸送に加え牛自体が温室効果ガスを発生させる為)。
▶ https://www.bbc.co.uk/news/uk-politics-56807520
不公正貿易に関わるアメリカの新法案について、 アメリカ鉄鋼協会(AISI)がコメントを寄せています。この法案は、将来、鉄・非鉄を含む様々な資材の国際流通への影響が有りそうです。法案は「Eliminating Global Market Distortions to Protect American Jobs Act of 2021」というもので、「為替操作を含む、外国のダンピングや補助金(による不公正な競争)から米国の製造業者が利用できるツールを強化する目的」で立案されています。この法案の最大のポイントは、例えば、中国の一帯一路戦略で中国政府により援助を受けてベトナム、インドネシア、他のアジア諸国内に(主に輸出を目的に)設立された(中国系の)製鋼施設がアメリカに鉄鋼を輸出する場合にも適用される、というものです。国境を越えた助成にも範囲を広げている事が大きなポイントです。
▶ https://www.steel.org/2021/04/aisi-applauds-new-bill-to-address-trade-cheating/
ウィスキーの大手ジョニーウォーカー・ブランドを傘下に持つ「DIAGEO社」が、更に新たな持続可能性のコミットメントを発表しています。2030年までに以下実施する事が含まれています。
– ジョニーウォーカーウイスキーの生産を100%カーボン・ネット・ゼロで行う。
– ジョニーウォーカーの蒸留所では100%再生可能エネルギーを利用する。
– 全てのパッケージをリサイクル可能、再利用可能、または堆肥化可能にする。
– スコットランドの泥炭地を修復し、樹木を植えて保護するプロジェクトへ投資する。
又、2025年までにボトルに最低60%のリサイクルガラスを利用し、その後、最終的にはパッケージに使用されるプラスチックを100%リサイクル材にする事、ガラス瓶を最大25%軽量化する事を発表しています。
▶ https://www.diageo.com/en/news-and-media/
米オクラホマ州が、「プラスチックの高度なリサイクル」に関する上院法案448を州知事が承認しています。オクラホマ州は、高度なリサイクル法を可決した米国で11番目の州になります。既に同様の法律を制定しているのは、フロリダ、ウィスコンシン、ジョージア、アイオワ、テネシー、テキサス、イリノイ、オハイオ、ペンシルベニア、バージニア等になります。新法は、プラスチック廃棄物を削減し、高度なリサイクル技術の採用を増やすことが目的となります。高度なリサイクルには、機械的リサイクルをアップデートする事とケミカル・リサイクルが含まれます。プラごみ削減は、既に欧州だけでなく、米国も同じ路線に進みつつあります。
▶ https://legiscan.com/OK/text/SB448/2021
EU委員会が持続可能な金融パッケージとして、投資における部類(タクソノミー)で、何がグリーン投資で何が非グリーン投資かを文章化したパッケージを公表しています。詳細はリンクの付属書に記載されていますが、原子力、天然ガス、森林バイオマスへの投資がグリーンか、という事で議論が続けられてきました。いずれも厳格化された内容となっています。
▶ https://ec.europa.eu/info/publications/210421-sustainable-finance-communication_en
Argus Mediaによると、ロシアが原子力を(電力)エネルギーに使い天然ガスから水素を製造する技術の開発、その他の低炭素水素製造方法の開発を目指す、としています。現在、欧州が輸入する天然ガスの40%はロシアの国営ガスプロム1社からで、それは90%が西ヨーロッパで消費されています。
上記EUタクソノミーでも天然ガスが低炭素燃料として「移行期間」に使われるべき、という議論がある一方、次世代のエネルギーとしての水素は方向性が既に決まりつつあります。
ただ、水素を生成するには、発生する水素以上のエネルギーが必要で、二酸化炭素を排出せずに水素を生成する為に原子力を使う利点がロシアにはあります。また、ロシアには豊富な天然ガスがあります。天然ガス由来の水素がグリーン水素かは、議論が分かれる所です(ブルー水素と呼ばれ、分ける傾向にある) 。
エネルギー問題というのは歴史的にも必ず政治問題、そして地政学問題に帰結する為、原子力を使ったロシア製の(将来の低価格)水素が、また欧州のエネルギー源になれば、現在の地政学問題は解決しない事になります。
ロシアはそこをよく理解しており、偶然にも欧州委員会がEUタクソノミーパッケージを発表日に、この事を公表しています。
▶ https://www.argusmedia.com/en/news/2207517-putin-urges-new-energy-approaches?backToResults=true
サーキュラーエコノミーを企業戦略の柱の1つとして取り入れて成功している代表的な企業「英ユニリーバ社」の食品ブランドである「Hellmann’s」が、2022年末までに英国市場で100%使用済みのリサイクルPETから作られたボトルに移行する事を発表しています。全PET製品が切り替わると、毎年約1,480トンのバージンプラスチックが節約されると報告しています。現在は既に再生PETを40%使用しています。Hellmann’sブランドの製品は、ドレッシングやマヨネーズのような調味料で、飲料用と違い内容物が比較的粘土の高い食品である事からリサイクル(特に洗浄)にコストが掛かり、実際に使われるrPETが100%Hellmann’sのボトル由来のモノが使用されるという事は明確にはコミットはしていません。
▶ https://www.hellmanns.com/uk/plasticsrevolution.html#
ヨーロッパでは、EU指令により使い捨てのプラスチックストローは2021年7月で禁止されます。無菌の飲料や食料カートン包装とそのシステムを開発製造するスイスの大手企業「SIG社」が画期的な製品を販売し始めています。ポイ捨てを防ぐ為に、ストローが飲料パッケージに取り付けられたままになるように再設計されており、カートンパックと一緒に廃棄します。その全てがリサイクル可能な材料で製造されています。ストローの材料はFSC認証を受けた持続可能な材料を利用しています。このストローとパッケージは、スペインの大手ミルクブランドである「CAPSA Food」の製品で利用されます。
▶ https://www.sig.biz/gb/media/press-releases/first-commercial-launch-for-sig-s-paper-u-straw-for-aseptic-cartons
アメリカの金属リサイクル業や鉄鋼業の営業成績が軒並み好調です。
アメリカの中北西部に複数の拠点を持つ鉄鋼生産と金属リサイクルを行うナスダック上場企業の「Steel Dynamics(スチールダイナミックス社)」が四半期決算を発表しています。スチールダイナミックス社によると、現状の市場下での決算としては「記録的」に良く、特にリサイクル部門が前四半期の2倍の収益になった、という事です。又、製鉄事業部門の収益は60%減と大幅に減少したにも関わらず、3月末の鉄鋼製品の受注残は記録的なレベルで住宅とインフラ需要は高く、今後の見通しも良好としています。加えて、EAFロール生産ラインを新しく投資する事も発表しています。グリーンディールによる環境インフラ投資と金融緩和で主要な金属が軒並み高値圏にある事が大きな要因となっています。この傾向は、しばらく続く可能性があります。
▶ https://ir.steeldynamics.com/Steel-Dynamics-Reports-Record-First-Quarter-2021-Results-4-19-2021