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世界の環境関連ニュース(2021年3月第5週)
プラスチック包装税への対応が急務の欧州では、リサイクルし易いプラスチック材料への代替えが進んでいます。特にPSからPPへの転換になります。持続可能な包装材の開発製造を目指すオーストリアの「Greiner Packaging」社が、顧客からの強い要望で2年に渡り開発を進めてきたPSをPPに変えたパッケージを試験投入しています。PSは「折れる」のですが、PPは柔軟性が高く「折れにくい」という特性から、ヨーグルトのパックなど「端を折って上蓋をはがす」タイプのカップでの利用が困難でした。その問題を克服した製品、という事です。
▶ https://www.greiner-gpi.com/en/Magazine/New-multipack-yogurt-cups-made-from-PP_s_293496
LMEでもアルミのリサイクル材を取引に含める予定が進められています。スウェーデンの「Gränges」が、アメリカ・テネシーのアルミ鋳造施設の能力を大幅に拡大し、スクラップ利用を高める事を発表しています。投資額は3,300万ドルで、スクラップ充填率を19.8%⇒22.5%にする、としています。
▶ https://www.granges.com/newsroom/press-releases/2021/granges-to-invest-usd-33-million-to-increase-aluminium-casting-capacity-in-the-us/
6月には欧州委員会より指令案が出る予定の「EUデューデリジェンス法」によって、今後、企業は環境、人権、統治機構(ガバナンス)について、潜在的、又は実際に起こり得る悪影響に関して、リスクを監視する方法を確立し評価する事が求められます。これは、EUに製品を輸出する国際的な企業にとっては大変な事です。植物油の開発・製造・販売を行う世界的なメーカーである「AAK(イギリス)」は、衛星を使ったパーム農場による森林破壊の監視するシステムを構築する事を発表しています。ここまでやらないといけない時代になって来る、という事です。日本企業はCEマーキングでさえ他のアジア企業に大きく後れを取ってきた歴史があるので、EUデューデリジェンス法は、必ず抑えておくべき事案です。
▶ https://www.aak.com/news-and-media/press-releases/2021/aak-implements-satellite-monitoring-globally-to-support-zero-deforestation/
国際銅研究グループ(International Copper Study Group:ICSG)が2020年の銅市場について、月間レポートの中で説明しています。同レポートでは2021年2月末の世界の銅在庫に関して言及しています。主要な金属取引所の銅在庫は合計285,000トンを超え、2020年末の在庫レベルを13%上回っている、という事です。但しCOMEXで10%減少、LMEでも30%減少しているようです。逆に上海先物取引所(SHFE)の在庫が今年2か月で97%増加した、という事です。中国の需給と在庫が相場に与える影響が大きいようです。
▶ https://www.icsg.org/index.php/component/jdownloads/finish/114/3092?Itemid
スウェーデンの大手家電メーカーの「エレクトロラックスAB社」が、サステナビリティレポートを発表し、2030年までにCO2を100%削減し、製品に少なくとも50%のリサイクル材料を含める事を目標に設定しています。欧州では廃棄物の回収率とリサイクル率を上げる為、拡大製造者責任(EPR)への動きが本格化していく中で、メーカーとして先行して取り組む所が多くなってきています。
▶ https://www.electroluxgroup.com/en/electrolux-reports-progress-on-new-sustainability-strategy-and-includes-climate-reduction-incentive-program-for-top-managers-32635/
Euractiveによると、EUの専門家の内部情報として、「欧州委員会が原子力発電をグリーン投資対象として認定する方向である」、と伝えられています。欧州委員会が科学専門家部門である合同調査センター(JRC)に対して、この問題について報告するよう要請したようです。EUでは、タクソノミーでも、天然ガスと原子力への投資をどのように扱うべきかについて、意見が分かれています。現実の問題として、再生可能エネルギーだけでは全てのエネルギー需要を賄う事は難しく、天然ガスや原子力が不可欠という議論が常に存在しています。
▶ https://www.euractiv.com/section/energy-environment/news/leak-eu-experts-to-say-nuclear-power-qualifies-for-green-investment-label/
欧州版のロイターが、インドの温室効果ガス排出削減について、スクープとして伝えています。2050年までのネットゼロの目標は設定せず、2030年までに二酸化炭素排出量を2005年比33-35%削減するという、パリ協定に準ずるか、もしくはその目標を上回ることを目標にする、と伝えています。また、2030年までに450ギガワットの再生可能エネルギーを生成するという目標を設定します。これは現在の容量の5倍に当たり、パリ協定の公約の2.5倍になります。欧州、北米、中国、日本、インドが脱炭素でエネルギー転換を進めれば、非鉄需要にも影響がでると思われます。
▶ https://uk.sports.yahoo.com/news/exclusive-india-baulks-carbon-neutral-104400103.html
イギリスに本社を持つユニリーバの北米会社である「ユニリーバ・ノースアメリカ」が、リサイクルのバリューチェーンで企業成長を促すファンドである、「クローズドループ・パートナー・ズリーダーシップファンド」に1,500万ドルを投資します。同ファンドは、既にテキサス州のリサイクル会社「Balcones Resources」の過半数の株式を購入、フロリダ州のリサイクル会社「Single StreamRecyclers」を買収しています。昨年ネスレも、同リーダーシップファンドに3,000万ドルを投資すると発表しています。ファンドのお金が入るという事が、この分野のリサイクルの重要性(ブーム:特にプラスチックリサイクル)を示しています。
▶ https://resource-recycling.com/plastics/2021/03/24/unilever-invests-in-fund-that-acquires-recycling-companies/
香港証券取引所に上場しているスマートフォンとIT関連電子機器の中国大手メーカーの「Xiaomi」が、正式にEV事業(スマート電気自動車)に投資する事を発表しています。会社のリリースでは、Xiaomiの過去の最も重要な決定の1つで、役員会で何度も議論した決定、としています。完全子会社を設立し、今後10年間の投資額がUS100億ドル(およそ1兆1,000億円)になる、としています。自社開発をゼロから行うのか、OEMでパワートレインを購入するEMS的な事業なのかは発表していませんが、電子機器メーカーの参入は、今後も続く可能性があります。半導体と電池を抑えれば、開発製造自体は何とかなる可能性が十分ある分野です。但し、サービス網や高い安全基準への対応等、電子機器メーカーがどこまでやれるのか、注目すべき発表だと思います。
▶ https://blog.mi.com/en/2021/03/31/key-initiatives-for-the-new-decade-an-open-letter/
スクラップ会社として世界最大手の「Sims Metal Limited」は先月発表された半期決算の中で、ASRのガス化のパイロット工場をオーストラリア・クイーンズランド州のロックリー地域に建設する開発申請を出した旨、発表しています。プロジェクトは傘下の「Sims Resource Renewal」で行われています。プラズマガス化技術というもので、燃焼ではなくASRを加熱し合成ガスを製造する技術、としています。軽量ダストと塩素分のあるプラスチックの埋立て(完全)削減に対する解が、求めらえる時代になっています。
▶ https://simsrr.com/projects/rocklea/
▶ https://www.simsltd.com/press-releases/sims-limited-announces-fiscal-2021-half-year-results/
アメリカバージニア州が高度な廃棄物リサイクルに関する法案「SB1164」を発行する予定です。この法案は、主にプラスチックリサイクルにおけるケミカルリサイクルを促進するものです。
▶ https://lis.virginia.gov/cgi-bin/legp604.exe?211+sum+SB1164
全米化学工業会もコメントを出しています。
▶ https://www.americanchemistry.com/Media/PressReleasesTranscripts/ACC-news-releases/acc-responds-to-epa-announcement-regarding-science-advisory-board-changes.html
コスメティック製品のブランドである「Estée Lauder Companies (ELC)」 と特殊材料メーカーの「EASTMAN」が、リサイクル可能な材料の利用とリサイクル材の再利用について、協力する事を発表しています。2025年までに包装材の75-100%はリサイクル可能にする、もしくは詰め替え可能か再利用可能なものに変更します。また、同じ2025年までに、包装材に含まれるリサイクル材料の量を最大50%にする事を目標としています。
▶ https://www.eastman.com/Company/News_Center/2021/Pages/Estee-Lauder-Eastman-sign-global-memorandum-of-understanding.aspx
アメリカのインフラ投資政策に対して、全米鉄鋼協会(American Iron and Steel Institute (AISI) )が歓迎のコメントを出しています。鉄鋼では2万マイルの高速道路整備を含む、都市循環道、都市間道路を近代化し主要な10個の橋の修復、その他の1万個に及ぶ小規模な橋の修復が含まれます。インフラ投資10億ドル毎に、約5万トンの鉄鋼が必要になる、としています。銅については、2030年までに50万台のEV充電器の全国ネットワークを構築する事が含まれています。これは全ての主要金属で需要が高まる事を意味しています。これらに対し、全米鉄鋼協会が歓迎の意を表してHPで公開しています。
▶ https://www.steel.org/2021/03/aisi-welcomes-biden-announcement-of-infrastructure-proposal/
詳細については開示されていませんが、韓国The Korea Bizwireが「SKイノベーション」のLiBリサイクル技術を米アルゴンヌ国立研究所が「環境にやさしい」方法であると認定した事を伝えています。欧州では、2024年7月よりバッテリーにカーボンフットプリント情報が義務化されることもあり、製造技術だけでなく、製造における二酸化炭素の排出、リサイクル材料の利用への注目が高まっています。その為、欧州のLiB製造とリサイクルを含むサプライチェーンの多くが、脱炭素にむけて急速に動いています。
▶ http://koreabizwire.com/u-s-institution-recognizes-sk-innovation-battery-recycling-technology-as-eco-friendly/186071
脱炭素における水素のエネルギー利用について一貫して疑問を呈しているEuropean Scientistが、「水素がなぜ商業的に水を電気分解して生成できないのか」、18世紀から人々に普遍的にあった単純な疑問に答えています。単純に電気分解に必要な熱量(エネルギー換算)が生成する水素の熱量(エネルギー量)よりも、計算上で4.5倍、現実的な化学プラントから生成される水蒸気等の熱エネルギー換算では7倍も必要になるという事です。つまり、水素1を生成するために、他のエネルギー7を使うという事です。欧州では、工業(場)発生のメタンや天然ガスの利用を視野に入れていますが、これも似たような理論で(エネルギー利用する程の大量な商業化)は難しく、更に元々が化石燃料の一部なので反対が多く議論が過熱しています。
▶ https://www.europeanscientist.com/en/features/why-is-industrial-hydrogen-produced-from-natural-gas-and-not-by-water-electrolysis/