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世界の環境関連ニュース(2022年09月第1週)
カナダのLIBリサイクル企業大手の「American Manganese Inc.」が、自社の工法にてLFP(リン酸鉄リチウム電池)の正極材から99%のリチウムを抽出する事に成功した事を発表しています。このプロジェクトは研究開発パートナーであるKemetco Research Incと共同で行われています。UBSのアナリストによると、2030 年までに世界のLFPバッテリーの市場シェアは40%に達する可能性が示されています。 現在LFPカソード生産のシェアは99%が中国です。American Manganeseは、長期的に域内でのバッテリーリサイクル率を伸ばす為、様々なリチウムイオンバッテリーリサイクルに対応する、としています。
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世界最大の鉄スクラップ輸入国で鉄くず相場の先行指標の1つとなっている国であるトルコですが、ロシアとの関係強化が相次いで報じられています。欧州がロシア産の石炭の輸入を禁止していますが、S&Pによるとそれで利益を得ているのがトルコとアジアという事です。8月以降の欧州の保険会社を通じた付保の禁止もありますが、少なくとも上半期は大きな伸びとなっています。また、ロシア政府とインド政府が、ロシアのMirカード決済システムとインドのRuPay決済システムの相互リンクについて合意に近づいた事も伝えられています。西側の制裁でロシアではVisaやMasterが使えない状況で、両国間の交渉は、西側の対ロシア制裁の影響を受けない金融システムを構築する目的で行われています。インドのみならず、中国、イラン、ナイジェリアも相互決済システムの構築を進めています。8月26日にトルコの財務相が、トルコ企業がロシアとビジネスを行う事について米国財務省がトルコに警告している事を「懸念すべきではない」とTwitter でコメントを出し、ニュースとなっています。トルコとロシアとの貿易額は5月から7月の間に50%近く急増しています。
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エネルギー価格の上昇が止まらない英国で、EV車の満充電に掛かる費用が10月から33.80ポンド(約5500円弱)になる可能性が伝えられています。10月1日に発効する新しい電気料金の改定で、中型自動車で64Kw/hのバッテリーを搭載したEVを一般的な7Kwの充電器で自宅にてフル充電した時の費用となります。2021年末の料金体系では、わずか13.69 ポンドでした。自宅でない公共の充電ポストは、自宅よりも更に上昇する可能性があります。英国のEV新車登録台数は昨年の1-7月に比べ今年は50%増加しています。しかし、電池に使われる原材料のコスト増で新車購入費用が高い事に加え、ランニングコストも上昇している事で影響が出ると見られています。
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低炭素アルミニウムとアルミスクラップに関するニュースです。世界で2位の金属・鉱業企業である英-豪多国籍企業の「リオ・ティント」がカナダのArvida製錬所に2,900万米ドル (約40億円)を投資して、アルミニウム・リサイクル施設の能力を年間30,000トン増強する事を発表しています。リオ・ティントのカナダの施設は水力発電を動力源として100% 再生可能エネルギーで運営されています。リオ・ティントは今年の夏に1億8,800万ドルの投資を発表しています。この投資でAlma製錬所の低炭素排出アルミニウムビレットの生産能力を 年間202,000トン増加する事も計画中です。スクラップの現地利用の増加と低炭素化への動きは、世界的にも継続し続けています。
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長鋼の生産設備では世界で50%以上のシェアを持つイタリアのDanieli & C.Officine Meccaniche SpA(ダニエリ)が中国の鉄鋼メーカー5社から計8台のECS(予熱)連続スクラップチャージ方式の電気炉を受注した事を発表しています。受注炉は210~330トン/時間の生産能力のもので、2022年末から2023年初頭に操業を開始する予定の設備です。4台はQiananshi Jiujiang から、1台はZhejiang Yuxin からの受注で、それ以外は明らかにしていません。同社の電炉では、溶銑、直接還元鉄 (DRI)、(HBIホット・ブリケット鉄) 、スクラップのいずれも使用が可能で、短い出銑時間が特徴です。中国鉄鋼メーカーが高炉から電炉に切り替える動きとなり、今後もこの流れが続くため、スクラップの流通量にも影響がありそうです。
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欧州ではプラスチック・サーキュラ―エコノミーの次のターゲット産業と認識されている繊維・ファッション産業の企業であるInditex社が、欧州政府による研究・イノベーション プログラムHorizon Europeの1つであるWhiteCycleコンソーシアムに加盟し、全プロジェクトに参画する事が発表されています。Index社は、ファストファッションのZaraとBershkaブランドを傘下に持ちます。WhiteCycleは発足したばかりのコンソーシアムで、4年間のEUイノベーション研究プロジェクトです。タイヤ、繊維、プラスチックのリサイクルに関するバリューチェーン全体でのイノベーションと技術開発を目的としています。
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フランスには56 基の原子力発電所があり、フランス国内のエネルギーだけでなく、輸出の安定した低コストの電力供給源と長い間見なされてきました。フランスは国内の電力エネルギーの70%以上が原子力発電によるもので、エネルギー安全保障でも脱炭素でも有利な立場にあると主張してきました。しかし、原発のほとんどが1970年代と1980年代に建設された施設ばかりで老朽化が進んでおり、使用延長の許可が下りる可能性は低いと見られています。新規の開発計画もありますが、実際は大幅に遅れています。フランス北部のフラマンヴィルで2007年から建設中の原子力発電所は、現在10年以上の遅れと5倍以上の予算をつぎ込んでいます。ヨーロッパの加圧水型原子炉に対する業界の信頼は崩壊しました。今年、フランス大統領選挙期間中にマクロン大統領が新規の計画を公約しましたが、様々な制約で稼働まで十数年掛かると見られています。2021年の英国の電力需要の9.1%は輸入であり、大部分はフランスからのものでした。現在は北イタリアも同じです。コラムニストのヒューゴ・リフキンドは、Times紙で英国は風力、水力、原子力等の(化石燃料以外の)追加エネルギー源への投資に失敗したことで、現在高い代償を払っている、と記載しています。短期的には欧州の電力を補う唯一の選択肢は天然ガスです。風力と太陽光からのより多くの再生可能エネルギーの供給を得るには2〜3年の準備期間が必要です。結局、政策の失敗を認めないという今の流れは当分変わらない為、しばらく産業も含めエネルギー問題で苦しむ可能性が高いと言えます。
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中国上海金属市場(SMM)が9月1日より主にリチウムイオン電池に使われるバッテリー品質の硫酸ニッケルの「価格指標」のデータを開示するサービスを始める事が伝えられています。理由は、湿式製錬中間製品の生産が本格化し始め、スポット市場が活況を呈している為です。バッテリー品質の硫酸ニッケルの価格指数は、SMMのWeb サイトwww.metal.com (英語) またはwww.smm.cn (中国語) にて、営業日の現地時間10:50-11:00に公開されます。また、SMMが主催したウェビナーで、中国向けのニッケルが供給過剰になり、年内がピークで値段が下がる可能性をSMMマネージング・ディレクターのFancy Li氏が伝えています。内容が抜粋され、Recycling Todayに掲載されています。中国ではニッケルブリケット、NPI、ステンレス鋼スクラップの需要も金属生産用のエネルギー削減により、現在制限に直面しています。Li氏によると一部の地域を除き、干ばつに見舞われ、水力発電の問題を抱えている四川省等は強制的な生産削減が行われているという事です。
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欧米では脱炭素の為にエネルギー転換への補助金が制度として確立して久しいですが、世界では化石燃料への政府援助が倍増しているという現状があります。最新のOECDとIEAのデータによると、世界経済の回復に伴いエネルギー価格が上昇した為、世界51ヶ国の化石燃料に対する政府の支援額は2020年の3,624億ドルから2021年には6,972億ドルにほぼ倍増したという事です。更にエネルギー危機に伴う燃料価格とエネルギー使用量の上昇により、2022年には補助金が更に増加すると予想されています。G20の石炭、石油、ガス、その他の石油製品の生産と使用に関連する予算再編と減税に関し、OECDの分析によると、化石燃料への支援総額は2020 年の1,470億ドルから2021年には1,900億ドルに増加しました。また生産者への支援も2021年の640億ドルで前年比でほぼ50% 増加し、2019年を17%上回っています。
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ポーランド政府とポーランドの首相による欧州排出権取引制度(EU ETS)の一時亭要求を、欧州委員会のライエン委員長が否定しています。エネルギー価格の高騰により昨年末にポーランド議会がEU ETS の停止を求める決議を可決しました。今月に入りガス価格の暴騰が止まらず、ポーランドの気候・環境大臣であるアンナ・モスクワは、EU ETSの一時停止を呼びかけていました。そして8月31日にポーランド首相のマテウシュ・モラヴィエツキは欧州のエネルギー安全保障の為にEUの排出権取引システム (ETS) を停止し、欧州委員会はエネルギー市場における価格メカニズムを改革する必要がある、と発言しました。この発言はコペンハーゲンで開催されたバルト海エネルギー安全保障サミットで行われています。EU ETSにおける炭素排出権価格は8月19日に過去最高の98.42ユーロ/トンに達し、2021年の平均価格53.52ユーロ/トンのほぼ2倍に達しました。エネルギー価格の高騰が続き、更にロシア産のガスと石油の輸入を段階的に削減している為、現在緊急に対応できる代替のエネルギー源は石炭となっています。ポーランドは石炭大国であり、石炭を電力エネルギー源に使う事によって支払う炭素価格の高騰は産業界にも打撃となっています。この要求に対して、欧州委員会の委員長フォン・デル・ライエンはEU ETSのコストは電気料金の約6%に過ぎず、コスト上昇の要因は主にガス価格の高騰であり、それらがコスト上昇の94%を占めている、として否定しています。今後9月9日にEU加盟国のエネルギー大臣による緊急会談が予定されています。
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米国で成立したインフレ削減法でEVへの補助金最大7,500ドルに対するバッテリーの原材料の調達条件により、今後リン酸鉄リチウムイオン電池が普及する可能性が伝えられています。インフレ抑制法では、EVに対する 7,500 ドルの税額控除が含まれており、重要なバッテリー材料の一部を米国内で抽出または処理する必要があります。この控除を受ける為には、2026年までに車両の重要な材料の 80%を国内、又は米国が自由貿易協定を締結している国から調達する必要があります。供給源を考えると、リチウムの目標達成は最も容易で、ニッケルの目標達成はより困難で、コバルトは達成できる可能性が低い、と見られています。その為、コバルトを利用しないリン酸鉄リチウムイオン電池の採用が増える可能性が指摘されています。
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韓国が原子力発電を利用したピンク水素の開発に取り組んでいる事が伝えられています。これは大統領選挙公約の1つでした。現在、世界では主に天然ガスを改質して得られるグレー水素、グレー水素生産時にCCSやCCUを組み合わせたブルー水素、再生可能エネルギーを利用して水を電気分解して得られるグリーン水素があり、ブルー水素とグリーン水素が各国や地域の水素戦略の柱となっています。水素戦略や水素プロジェクトの多くが誇大に宣伝され実現するまでに何度も遅延をくり返す中、最近投資家の間でも原子力発電エネルギーを利用した電気分解によるピンク水素が注目され始めています。原子力がEUタクソノミーで条件に合えばグリーンと定義された事も理由の1つです。ピンク水素は欧米では一般的な呼び方ですが、一部ではレッド水素やパープル水素と呼ばれる事があります。
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ユーロ圏のインフレ率が8月には9.1%となり、過去最高を記録しました。エネルギーの年間インフレ率は38.3%で7月の39.6%からわずかに低下ましたが、食品(アルコール&タバコ含む)は7月の9.8%から10.6%に増加しています。ドイツのインフレ率は7月の7.5%から8月には7.9%に押し上げられています。特にドイツでは最近インフレ率が猛烈に上昇しています。イタリアの消費者物価指数は、7月の7.9%から8月に8.4%に上昇し、エネルギー価格だけでも年率44.9%上昇しています。エネルギーと生鮮食品を除く、コアインフレ率も4.1%から4.4%に増加しています。欧米のインフレはコアインフレも高い水準で推移しており、エネルギーに起因するものだけでなく、需要に対する供給不足やパンデミックでばら撒いた資金によるものでもあります。エネルギー高騰によるインフレは年内に収まる可能性は低く、利上げによる景気減速も懸念されています。
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