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世界の環境関連ニュース(2022年08月第3週)

石炭鉱業企業の利益が急増している事が伝えられています。コモディティ大手のグレンコア(スイス)は、上半期の石炭部門の収益がほぼ 900%急増して89億ドルに達し、中国の石炭採掘・鉱業関連企業の上半期の収益は 2倍以上になり、総計で800億ドルになったと報じられています。米国の生産者も大きな利益を上げており、最大の鉱業企業であるアーチ・リソーシズとピーボディ・エナジーは、欧州の発電所での需要が非常に強いため高品質の石炭を販売し利益を上げている、という事です。これらの巨額の利益は投資家に多額の報酬をもたらしています。脱炭素化の為、新たな石炭鉱脈や採掘事業への投資はほぼ無い為供給が増えず、皮肉な事に石炭生産者の成功を後押ししています。投資の欠如が逆に需要増に対する供給を制限している為です。ロシアのガスの多くを失った欧州が海上輸送で石炭を多く輸入しており、世界的な需要はかつてないほど高まっています。アジアのベンチマークであるオーストラリアのニューキャッスル港の価格は7月に過去最高を記録しました。アナリストや石炭業界の幹部は、引き続き需給はタイトな状態が続くと見ており、石炭鉱山企業の収益は増加し続けると見ています。安価なエネルギー源である石炭発電は現在でも世界で人気のある発電方法であり、全電力の 35%を占めています。
https://bit.ly/3w9Kxn3

熱分解によるプラスチック廃棄物の研究を行うフィンランドの半官営組織(機関)であるVTTリサーチセンターが、40年に渡る研究で得た新技術を利用する会社を10月にスピンオフして設立する事を発表しています。計画では同機関が開発した熱分解技術Olefyを導入する新会社(Olefy Technologies)を設立します。開発したOlefy技術は「プラスチック廃棄物から70%以上のバージン同等品質のプラスチック原料と化学原料を抽出できる」と報告しています。VTTのCEOであるAntti Vasaraは、以下のように述べています。 「現在のリサイクル方法の問題点の1つはプラスチックをリサイクルする度に品質が低下することです。機械的なリサイクルを数回繰り返した後、品質が著しく低下し、プラスチックは使用できなくなり、埋め立て処分されます。Olefyのリサイクルプロセスにより、プラスチックの品質はバージングレードと同等になる為、無期限にリサイクルする事ができ、最終的に埋め立て地に廃棄する必要がなくなります」「本質的にOlefyはプラスチックが循環型経済の真の一部になることを可能にします」。 現在8件の特許を申請中です。Orefyのパイロット工場はフィンランドのエスポーにあり、試験運転を続けています。同社は現在パートナーシップについて話し合っており、スケーリング、事業開発、技術のライセンス供与について投資家と交渉しています。最初の産業用実証運転は2026年までに稼働する予定です。Olefyの基本技術は、熱分解によるガス化で、プラスチック廃棄物をオレフィンやその他の炭化水素に分解します。
https://bit.ly/3JYLoN0

米国で成立したインフレ削減法(IRA)では、EV補助金 (税額控除)7,500 ドルを受ける条件に2023年に米国または自由貿易協定 (FTA) からバッテリー材料の少なくとも5分の2を調達する、という項目があります。具体的には、カナダ、チリ、オーストラリア等のFTA諸国からの鉱物資源の輸入です。ガイドラインではバッテリーの主要金属の供給国であるインドネシア(ニッケル)とアルゼンチン(リチウム)が除外されています。また材料調達目標を2026年までに80%に引き上げる為、大変厳しいものです。この条件により、米国ではバッテリー材料調達のサプライチェーンを完全に変える必要に迫られている事が複数のメディアで伝えられています。EVに使用される主要な鉱物の独立したサプライチェーンを構築する為の米国と欧州の取り組みは、西側諸国と中国&ロシア間の緊張の高まりと共に加速しています。ロシアのウクライナ侵略以降、天然資源を巡り地政学上のリスクが明らかになった教訓から、域内での調達を加速させる法的枠組みを整備しています。また、パンデミックによるサプライチェーンのリスクが浮き彫りになった事も大きな教訓となっています。
https://bit.ly/3AnFotU

日本の「㈱エマルションフローテクノロジーズ」がオランダのリサイクル専門誌Recyclyng Internationalで紹介されています。既に同社の事はMIRU.comや日経新聞等で取り上げられている為ご存知の方も多いと思います。リチウムイオン電池を始め、レアメタルのリサイクルをエマルションフロー技術を活用した溶媒抽出プロセスで行う新興企業です。
https://emulsion-flow.tech/
https://bit.ly/3pnvLVQ

欧州のエネルギー危機が金属産業に影響を与え始めています。アルミ二ウムの生産では世界最大級の多国籍企業であるノルウェー「Norsk Hydro ASA」が、過半数を所有するスロバキアのアルミ二ウム精錬企業(スロバコ)を停止する計画がある事が伝えられています。電力価格が記録的な高値に急上昇しており、欧州の産業経済全体に大きなストレスを与えています。同地域は過去1年間で製造する亜鉛とアルミニウムの製錬量を約半分まで落としており、Hydroは現在、スロバコの工場を完全に閉鎖する方向に動いています。電力価格が高騰し、各国政府が冬季のエネルギー使用を削減する対策を推進する中、金属業界の膨大な電力需要は厳しい状況に追い込まれています。アルミニウ1トンあたり約14メガワット/時の電力を必要とし、これは英国の平均的な家庭を3年以上稼働させるのに十分な量です。1トンあたり約4メガワット/時の電力を必要とする亜鉛の生産も深刻な緊張に晒されており、この発表の後に一時的に価格が高騰していました。突然の供給制限で価格が乱高下する可能性が指摘されています。
https://bit.ly/3QQXbPK

欧州で大手の多国籍資産管理会社の「Schroders Plc.(シュローダーズ)」が「ヨーロッパのガス危機: 投資家にとって何を意味するのか?」というタイトルのコラムをHP上で発表しています。短期的な企業への影響としては、金属生産や化学等のエネルギー集約型セクターが最も影響を受ける、としています。また最終的に勝者はいるのか?という結論では、再生可能エネルギー産業と短期的には米国のガス産業であると分析しています。欧州のインフレ解消にはロシアのガスに代わるエネルギーを輸入するインフラを含めたサプライチェーンの確立が2年間は掛かる見込みの為、2年後以降であると結論づけています。
https://bit.ly/3QLU0Zu

9月に最終決議が予定されている欧州の再生可能エネルギー指令(RED III)の最大の関心事の1つである森林を伐採し再植林を行っている木材を原料とした木質バイオマス燃料(1次バイオマス)について最新の状況が伝えられています。既に欧州議会の環境委員会ではこの1次バイオマスを間伐材、又は製材や家具工場から排出する残渣(2次バイオマス)と分けて定義しており、1次バイオマスを再生可能エネルギー源から外す事を提案しています。再生可能エネルギーから除外された場合は、補助金の対象から外れる事になります。2次バイオマスはそのまま再生可能エネルギー源として認められる事になります。これに対し、北米の木質ペレット産業と、スウェーデンに本拠を置く世界バイオエネルギー協会(WBA)の両方が、87億ドル相当の木質ペレット産業と50を超える内外の貿易団体や企業を代表し熱心にロビー活動を行ってきた事が伝えられています。一部の欧州議会議員は2次バイオマスも「燃焼」させる事により炭素発生を生み出す為、2次バイオマスを再生可能エネルギーの定義から外す事を要求しています。WWFも似た論調で、意見書を発表しています。
https://bit.ly/3AuXdHO
https://politi.co/3Cd1CQT
https://bit.ly/3c8cXH0

鉄スクラップ世界最大の輸入国であり相場への影響があるトルコが、予想外の利下げを行い世界中を驚かせています。トルコの中央銀行は政策金利を14%から13%に引き下げています。トルコのインフレは7月に79.6%に上昇しており、10月には87%にまで達すると見られている中、利下げは全く予測されていませんでした。トルコのインフレ調整後の実質金利は現在マイナス66.6%です。企業や一般の人々はリラが毎月価値を失う前に多くを消費に費やすことを余儀なくされています。5年前に1ドル3.5リラだったトルコの通貨は、現在1ドル18リラを超える通貨安となっており80%近い下落となりました。トルコのエルドアン大統領は石油が豊富な湾岸諸国に外交上の提案を行い、イスラエルとも緊張緩和を実施する事で投資を呼び込み、更にロシアとのビジネスと貿易に熱心に取り組んでいます。トルコ政府はリラ防衛の為に多額の外貨準備を支出し、外貨保有の多い企業へのリラ融資を停止しています。今後、リラ防衛の為に資本規制(海外への資本流出の防止)を行う可能性もある事が伝えられています。
https://cnb.cx/3QxvOKE

海運業の脱炭素化の選択肢の1つとしてある推進動力発電用の原子力利用について米国のエネルギー省がABSと契約を結んだ事が伝えられています。契約は商業船への高度な原子力推進システムの研究に関するものです。現在、海運業の脱炭素化の選択肢としては、原子力、アンモニア燃料、電動化、再生可能メタノール燃料の4つがあります。ABSによると、研究プロジェクトの範囲は、商用海事用途に新しい原子炉技術を採用するという課題への対応です。ABSは海洋用途向けの高度な原子炉技術のモデルを開発し、最新の原子力発電の商業利用に関する業界向けの勧告を作成します。原子力は1950年代に海事産業にとって大きな可能性を秘めていると見なされていましたが、安全上の懸念と船上でのシステム操作の問題が残り発展しませんでした。世界の海軍は核推進を採用しましたが、米国はデモ商用船を1隻建造しただけで、ロシアが原子力商船を運用し続けた以外は、いずれも実施してきませんでした。
https://bit.ly/3pqbdMD

米中間選挙の結果次第では気候変動政策が修正される可能性のある件で、面白い話がありますので、お伝えします。日本でも報じられていますが、米国時間の16日にワイオミング州の共和党の予備選挙がありました。予備選で勝利したのはトランプ元大統領が推したハリエット・ヘイグマン氏で、ダブルスコアで完勝しました。対戦相手の共和党員では少数の反トランプ派であり、ブッシュ政権下で国務長官だったチェイニー氏の娘であるリズ・チェイニー現連邦下院議員が敗北しました。リズ・チェイニーは「トランプの刺客によって葬り去られた」という報道がされていると思います。それはある程度正しいのですが、現実はリズ・チェイニーが反トランプと民主主義というイデオロギーに終始し過ぎ、一方のハリエット・ヘイグマンはインフレや治安等の現在市民が抱える問題に焦点を当てた事が大きな差であったようです。共和党員にとっても親/反トランプやイデオロギーよりも目の前の現実という事が最も重要という事のようです。実はこのトランプを支えてきたキリスト教福音派に並ぶ強力な援護者であった世界の保守系メディア王であるルパード・マードックがトランプ元大統領に「見切りをつけた」という報道が話題となっています。ルパード・マードックは米国の保守派メディアで人気のある「ニューヨークポスト紙」と「ウォールストリートジャーナル紙」、「ケーブルニュースネットワーク」のフォックスニュースを所有しています。ワシントン・ポスト紙は複数の情報源から、ルパート・マードックが「トランプへの熱意を失った」と伝えています。過去に英・米・豪で複数の政権に大きな影響を与えてきた91歳のメディア王の動きは、今後違う流れを作る可能性を秘めています。マードックはフロリダ州知事のディサントスを推しているようで、ディサントスは頭脳明晰な超保守派の為、実現すれば民主党にとって相当手強い相手になると言われています。
https://bit.ly/3K5mVFZ
https://bit.ly/3prTGTY

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